内需の低迷に苦しんできた韓国経済にようやく回復の兆しが見え始め、2006年の国内総生産(GDP)成長率は、昨年の3・9%水準から5・0%(韓国銀行、KDI)にアップする見通しだ。不振だった企業の設備投資も小幅ながら増加に転じ、景気回復に伴って雇用も増大するとみられている。しかし、原油価格の高騰やウォン高など、韓国経済を取り巻く環境は依然として厳しく、モルガン・スタンレーのように、韓国の成長率を3%台と予測しているところもある。各シンクタンクがまとめた「2006年韓国経済展望」をもとに、今年の韓国経済と10大産業の見通しを占う。
◆経常黒字は160億㌦に縮小 韓国銀行◆
韓国銀行は、「2006年経済展望」で今年の国内総生産(GDP)成長率を上半期5・5%、下半期4・6%、年間で5・0%と予測した。これは昨年の推定値3.9%よりも高く、4%台後半の潜在成長率を小幅ながら超える水準だ。韓銀の予測は国内のシンクタンクの中で韓国開発研究院(KDI)と共に最も高い数値になっている。
韓銀の成長率展望は、他のシンクタンクと比べてかなり楽観的だ。国内シンクタンク7カ所の平均成長率は4・79%で、韓銀より厳しい見方をしている。
韓銀の金在天・調査局長は、「昨年第2四半期から景気が回復に向かい、第4四半期に潜在成長率水準に達した。消費の回復が顕著で、この勢いは来年も続く」とし、「建設投資が1・7%増と多少不振だが、設備投資は昨年の3・9%から5・4%に拡大し、輸出も世界経済の成長が続くことや、IT(情報技術)景気の回復などで10・3%の増加率を記録し、2ケタの伸びを維持する」と展望した。
このような韓銀の楽観的展望にもかかわらず、今年の韓国経済を不安視する声も多い。まず、設備投資の十分な回復が期待できない点だ。韓銀が示した設備投資増加率5・4%では、今後の安定した成長を維持するには不十分だ。
韓国経済研究院のペ・サングン研究員は、「投資が依然として不安定な点が問題だ」と指摘し、「韓銀は内需が経済成長を牽引するとみているようだが、依然として輸出に頼ることになるのではないか」と悲観的だ。特に政府が昨年8月に発表した不動産総合対策以降、建設投資が不振で、新規分譲市場を中心に民間の住宅景気が低迷すると懸念している。
一方、韓銀は、今年の経常収支について、輸出は順調に伸びるものの、サービス・所得収支の赤字が拡大し、黒字幅は昨年の175億㌦から160億㌦に小幅減少すると予想している。
このほか、雇用事情が改善し、失業率は昨年の3・8%から今年は3・6%に低下する見込みだ。実質賃金上昇率は、昨年第3四半期までで5・3%アップし、前年の4・3%を上回ったが、この傾向は今年も続くと予想されることから、消費増加率は昨年の3・0%から4・5%に拡大するもようだ。
しかし、景気の回復に伴って物価上昇圧力が加わり、消費者物価上昇率は昨年の2・7%から3・0%に小幅アップする。昨年は、農水畜産物の下落やウォン高が物価安定に寄与したが、今年は特別な物価下落要因がなく、7月にはタバコの値上げが予定されていることから物価が不安定になる見込みだ。
◆民間消費が4%台に増加 KDI◆
韓国開発研究院(KDI)は、内需の回復と輸出の好調で今年の成長率が昨年の3%台から5%前後に上昇すると展望している。
2006年上半期は内需の回復傾向が持続し、5%台半ばの成長率を記録、下半期は輸出が多少鈍化するため、4%台後半の成長率を記録するもようだ。下半期に落ち込むのは、前年の高い伸び率に対するテクニカル反落によるもの。
昨年3%台の増加率を記録した民間消費は、所得の増加に伴って消費意欲が回復し、今年は4%台前半まで上昇するとみられる。
設備投資の増加率は、昨年4%台初めまで回復したが、今年は民間消費とサービス部門の接続的な回復で7%前後に高まる。昨年1%を下回り、不振だった建設投資は、回復が鈍く、1%台にとどまる見通しだ。
輸出(物量ベース)は、世界経済の成長持続とIT景気の回復で伸び率が昨年の10%台から13%台に高まる。ただし、金額ベースでは、輸出単価が下がり、昨年と同じ12%台になる。商品収支は内需回復の影響で輸入が増え、黒字幅が昨年の350億㌦より多少減って320億㌦前後になるとみられる。経常収支黒字も昨年の170億㌦から120-130億㌦に縮小する見通しだ。
このほか、サービス・所得・移転収支の赤字規模が、昨年(180億㌦)より増え、190-200億㌦に達する。
一方、昨年は国際原油価格の高騰をウォン高で相殺できたが、今年は為替効果がなくなり、内需回復に伴う物価上昇圧力で消費者物価上昇率は、上半期に2・6%、下半期には3・3%に上昇する見込みだ。