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2007/09/29

<韓国経済>韓国進出日本企業インタビュー・競争から共創へ 第4回                                          ~ 月島機械執行役員 森島 進 氏 ~

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    もりしま・すすむ 1948年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。1970年月島機械入社。国内営業部を経て、海外営業部で韓国事業に本格的に携わる。2000年から営業担当執行役員。アメフトの早稲田大学OB会長。日韓アメフト交流も実践。

 ――月島機械と韓国との関わりはいつ頃から始まったのか。

 韓国には戦前から機械を入れていて、それからのお付き合いである。戦後初めての取引は、砂糖をつくる機械で、三養社、大韓製糖、第一製糖などに納めた。

 当社はもともと、欧米から輸入していた砂糖製造プラントを国産化するためにつくった機械メーカーだった。砂糖の製造工程としては、まずサトウキビを絞って「ケーンジュース」にし、それを煮詰めた後に冷やして結晶にする。それを遠心分離器にかけて乾燥させて砂糖をつくるのだが、その際の遠心分離器、結晶化装置などが当社の基本技術だ。当時韓国は三白景気で、砂糖工業が起きて、当社の製造装置は大きな需要があった。

 その後、1960年代に入り、韓国は工業化へ向けて硝子製造工場をつくったが、それに必要なソーダー灰用焼成炉を納めた。これは、海水にアンモニアなどを反応させてつくるガラス原料のソーダ灰を作る上で重要な設備だった。その後も、さまざまな機械を入れた。

 ――最も成功した事例をあげるとすれば、どんなものがあるのか。

 環境関連の設備だろう。日本同様、韓国でも70年代後半から、工業廃液処理が問題になっていた。通常、工場廃液を燃やすためには大量の油が必要となる。月島の設備を使った場合、廃液を濃縮して燃やすので油を使用しないか、少しの油で済んだ。しかも、焼却炉の排ガスを利用して濃縮することができ、自己循環型技術ということで、当社の独自技術が大いに受け、韓国でも沢山買ってくれた。これは、いまでも当社の主力設備であり、世界中で売れている。

 韓国の公害発生を抑制させることに貢献できたと思っているが、中でも最も成功したのは東西石油化学のケースだ。設備導入前は年間10億円ほどの油を使っていたのが、それがゼロになり、発生蒸気を活用することで逆に2、3億円の利益を得ることができた。焼却炉導入費用は10億円に満たず、すぐに回収できた。しかも、省エネルギーで大統領表彰も受けた。当時、東西石油化学は経営的に大変厳しい状態にあったが、見事蘇った。当社としては間接的に貢献できたと喜んでいる。その時の恩を忘れていないというか、日本企業に対する信頼感になっているのだろう。いまでも東西石油に行けば、非常に歓待してもらっている。

 また、環境設備以外にも、スチームチューブドライヤーの引き合いが相次いだ。韓国でも繊維産業が興り、綿の代わりとしてポリエステル需要が急増してきた。そして、その原料となるテレフタル酸を自国で沢山つくるようになった。しかし、これは出荷するときに乾燥させなければならない。その乾燥設備を当社が納めていた。これは、いまも世界で70%以上のシェアがある。

 ――韓国への技術移転をめぐり日本では一時ブーメラン論が起こった。月島機械のスタンスは。

 今の大林産業、当時の大林エンジニアリングという会社は、今では当社よりも大きくなったが、初期には多くの技術支援をした。大林初の成功プロジェクトとなった廃液燃焼施設の客先への納入には、当社も大きく貢献した。鉄鋼関係で過去にみられた、技術提供をすればそれが後になってダメージとなるブーメラン現象といったこともほとんどなかった。

 ――韓国との交流で感じた点は。

 韓国のビジネスは、決めるべきトップの決断が非常に速い。日本は社長などトップでもなかなか決める為の時間がかかる場合が多い。プラント一つ作ると決断するのに1年かかることもある。スピード感の違いは一番感じるところだ。また、一度信頼関係を築くと、非常に仲良くなれ、何事もスムーズに進むようになる。

 私は入社以来、韓国との仕事は30年ほどになるが、1年に25回くらい韓国に行っていた時期もあった。最初は貧しかったが、今では韓国の発展ぶりが実感できる。

 ――現在の韓国事業のウェートはどのくらいか。

 10年ほど前までは、海外事業において韓国の売上が一番多かった。最近は、全売上600-700億円の約4%。海外事業の中では25%で、中国に次ぐ規模だ。今では、中国にプラントをつくる韓国の企業が増えている。韓国経由で当社の施設を中東や東南アジアに納入することもある。

 ――韓国との事業で月島機械がテーマと考えていることは。

 昔は韓国の会社も国内のことだけを考えていればよかったが、それではマーケットが限定される。これまで韓国企業は外から技術を入れて製品をつくって発展してきたが、今後は自主開発していかなければ苦しくなると思う。サムスンのように独自路線を歩めばいいが、そういうことができる企業はそれほど多くない。

 これからは、韓国の会社が新しいプロセスを開発するとか、新しい製品を作り出すに当たって、研究段階から一緒に協力していく必要があり、月島機械がインターナショナルなマーケットで生きていくうえで欠かせないこととなっている。今われわれが力を入れているのは、韓国の会社とのプロセスの共同開発である。

 ――韓日経済関係の競争と協調について。

 われわれは今までは韓国の企業と競争することはなかったが、もしそういった局面になれば、その分野については諦めて手を引くだろう。そこで頑張っても意味がないからだ。中国、インドなどもっと違う国に技術を売るといったことになるかも知れない。

 ――今後の韓日関係への提言を。

 日韓両国の若いエンジニアを比べると、どうも日本人の方が韓国人に負けるんじゃないかと思ってしまうが、互いに切磋琢磨していく必要があるだろう。

 当社では、昨年まで韓国のある企業で社長をやっていた方に顧問をお願いして毎月、部長以上の会議に出席してもらい、経営などに関するレクチャーをしてもらっていた。彼は、まず夢のレベルで目標を立て、そこに向かうためにはコミュニケーションが非常に大切だと言っていた。それがうまくいけば、夢に近づけるのだと。いろいろと参考になった。今後とも共同で作業することが大切だと思っている。