今年も「夏闘」(日本の春闘に当たる賃金交渉)シーズンがやってきた。主要企業の労使は、今年から7月初めにかけて本格的な賃金交渉に入る予定だ。会社側は厳しい経営事情を説明し、労組の譲歩を引き出す構えだが、組合側は夏闘を通じて要求を貫徹する計画だ。韓国経営者総協会は、今年の夏闘の特色として、例年のような賃金引き上げと処遇改善よりも雇用安定に力点が置かれるとみており、労組のストライキなど過激な行動は大幅に減ると予想される。
自動車労組は、今年の交渉の最大の課題として「雇用安定」を掲げている。現代自の労組は、「生産の海外移転で雇用の安定が阻害される」と主張しており、賃金交渉では、この問題を積極的に提起する方針だ。
起亜自の労組も、「自動車部品の専門化、大型化によって外注比率が高まっている」と指摘し、雇用の安定を確保するため、工場内に部品工場を誘致することを会社側に要求する考えだ。
GM大宇の労組は、会社側が韓国での生産を減らし、GMの海外工場に移転する話が持ち上がっていることから、これを阻止するため、新モデルを仁川・富平工場、慶尚南道・昌原工場、全羅北道・群山工場で生産するよう要求する。
造船業界は、定年延長と処遇改善が争点になりそうだ。韓進重工業の労組は、定年を現行の57歳から60歳に延長するよう申し入れる。協力会社の処遇改善も造船業界の争点になっている。すでに5度の団体交渉を終えた大宇造船海洋は、協力会社に対して、成果給、休暇日数、特別手当て、名節の土産などを本社と同等に支給するよう要求している。現代重工業とSTX造船の労組も、協力会社の臨時社員の正社員化など処遇改善を求めている。
一方、実績が低迷しているサムスン電子、LG電子、ハイニックスなどの電子業界は、労使が事実上凍結に近い賃金引き上げで合意し、早々と賃金交渉を終えた。これによって労使紛争は回避された。サムスン電子は、事務職の賃金引き上げ率を2・25%水準に調整し、LG電子も賃金引き上げ率を2%前後にすることで合意した。
ここ数年、パイロットの処遇問題でもめてきた航空業界も、労組が早々と会社側に賃金交渉の全権を一任し、例年のような紛争は起きていない。