李明博大統領は、公正取引委員会の業務報告を受け、「これまでの公取委の役割は、企業の活動を萎縮させるもので、企業の負債比率が400-500%(現在は100%以下)だった時代の規制を引き続き行っている」と指摘、「新しい時代の変化に応じ、公取委が先頭に立って改革を進めていくべきだ」とし、企業に対する規制緩和に取り組むよう指示した。また、「企業寄りとの批判を恐れて消極的な政策に終始すれば、改革はできない」と述べ、すべての規制に対する再点検を求めた。
公取委は、企業の相互出資禁止、債務保証制限の対象縮小、企業調査方法の改善など、各種規制緩和措置を盛り込んだ新たな活動方針を李大統領に報告した。
それによると、相互出資禁止と債務保証制限規制の対象となってる大企業グループの選定基準を現行の「資産2兆ウォン以上」から「資産5兆ウォン以上」に緩和する。これによって、規制の対象となるグループは、現在の79社から41社に減る見通しだ。
しかし、サムスン、現代自動車、SK、LGなどの韓国を代表するグループは、引き続き規制を受けることになる。これに対して李大統領は、「積極的に規制を解除しなければならない」と、不満をもらした。
また公取委は、特定業種に対して一括実施している「職権調査」及び書面の提出だけでなく該当企業を直接訪問する「現場調査」を減らすと明らかにした。職権調査は、不正取引疑惑や、それによる被害が確認された場合にのみ行い、現場調査は事務局長以上の許可を受け、調査期間も最小限にとどめる方針だ。これまで財界は、公取委の調査を一方的で強硬的だと批判してきた。
このほか、公取委は今年上半期に出資総額制限制度を廃止し、持ち株会社関連規制(負債比率200%以下、非系列社の株式5%保有禁止など)を廃止・緩和することも明らかにした。M&A(企業の合併・買収)の申告・審査義務の対象企業も現行の資産・売上1000億ウォンから2000億ウォン基準に緩和し、対象を現在の3分の2水準に減らす計画だ。
公取委は、残りの規制に対しても妥当性を検討し、先進国が実施していない規制については廃止する方向で段階的に調整していく考えだ。
これに対し、李大統領は、「手ぬるい」と批判し、規制緩和に拍車をかけるよう指示した。李大統領は、企業規制全般の再検討を求めたうえで、「これまで大企業に対する規制をなくせなかったのは、イデオロギー的、政治的側面もあったが、ポピュリズム(大衆迎合主義)の影響が強かったためだ。政策は世論に従うべきものだが、世論を主導していくべきものでもある」と強調した。
これを受け公取委は、「広く意見を集め、追加的な規制緩和案をまとめたい」としている。今後、公取委は、大企業の監視及び拡張阻止を主体としてきた政策の転換を迫られることになる。