韓国の政府系ファンドでもある韓国投資公社(KIC)が15日、サブプライムローン(信用力の低い人向け住宅融資)で危機に瀕した米国の証券大手メリルリンチに20億㌦を投資すると発表した。メリルリンチも、66億㌦の優先株を発行し、KICははじめクェート投資会社、みずほコーポレート銀行などが出資すると明らかにした。
KICが引き受けるメリルリンチの優先株は、年9%の配当を受けるという条件付きで、引き受け後、2年9カ月経てば普通株に転換できる。普通株への転換価格は、1株当たり52・4㌦で、14日のメリルの株価(55・97㌦)より低い。KICは、サブプライム問題が解決すれば、メリルの株価が上昇し大きな収益を上げることができると期待している。
普通株に転換すれば、KICはメリルの株式の3・1%程度を保有することになり、メリルの5大株主に浮上する。投資目的でメリルの株式を保有しているファンドなどを除くと、シンガポール政府投資機関テマセック・ホールディングに次ぐ2大株主となる。
KICの朴チョンイン・経営企画チーム部長は、「投資先を模索する過程で、我々からメリルリンチに投資を提案し、メリルがこれを受け入れた」と明らかにした。投資資金20億㌦は、現在運用中の200億㌦から拠出するのではなく、政府が別途資金を提供する。
KICのメリルリンチへの投資は、収益を画期的に高めるねらいがある。これまでKICは、堅実な資金の運用を心がけ、ほとんどが先進国の債券(148億㌦)に投資してきた。一部は株式に回っているが、先進国のインデックスファンドが主で、リスクを避けてきた。このような安全運用には巨額を失うリスクはないが、その分収益率は低い。昨年のKICの投資収益率は年7%台前半にとどまった。テマセックは、この数年間で年平均17%の収益率を上げており、対照的だ。
こういった国家資産の運用をめぐり、国会の場でもKICの運用方針を問題視する声が挙がっていた。今回の投資は、投資パターンを変えようとするKICと、サブプライム問題で大きな損失を出し、資金不足に陥ったメリルリンチの利害が一致したことで成立した。
今回の投資を契機にKICは、投資先の多角化とともにグローバル資産運用会社へと躍進を図る考えだ。