スウェーデン通信機器大手のエリクソンが、近未来の高速通信である第4世代移動通信(4G)の技術開発を韓国のメーカーと共同で行うことになった。今後5年間で15億ドルを投資し、研究開発(R&D)センターを新設するなど、韓国を開発拠点に世界標準をめざす戦略だ。
エリクソンは欧州式移動通信標準(GSM)と第3世代移動通信(3G)インフラ機器分野で世界トップだ。現在、世界的携帯メーカーのノキアなどと共同で、「ロングタームエボリューション」(LTE)という高速大容量通信技術の開発を進めている。これは、韓国のサムスン電子などが主導するブロードバンド無線通信規格、ワイブロ(Wibro)と競合する規格でもある。
今回の投資計画は、韓国の3G通信網やワイブロ網を生かしたLTE技術商用化の可能性を確認し、将来的にはワイブロとの協力も模索しようという戦略だ。同社は、韓国の携帯電話製造技術や移動通信の商用化能力、中小モバイル機器メーカーの技術力を高く評価しているとされる。今後、R&Dセンターとテスト環境を韓国内に構築し、韓国支社の人員も80人から1000人規模へと拡大する。
欧州を歴訪中の李明博大統領も12日(現地時間)、スウェーデンでエリクソンのハンス・ヴェストベリ会長と会談し、韓国と世界における二酸化炭素(CO2)排出量削減の取り組みにIT(情報技術)を活用する方法について話し合った。
エリクソンの大規模投資は、サムスン電子やLG電子、KT、SKテレコムなどのIT企業にとって、次世代高速通信市場をリードするチャンスが与えられたことを意味する。新規の通信網構築に数兆ウォンの投資が必要とされるワイブロと違い、LTEは既存通信網を活用できることが最大のメリットだ。世界の移動通信技術の流れを見ても、LTE技術に将来性があるとの期待も高い。
3Gやワイブロで出遅れているLG電子とLGテレコムなどは、エリクソンの韓国投資を歓迎している。具本茂(グ・ボンム)・LGグループ会長自ら「LTEを育成したい」と公言するほど意欲的だ。商用化の可能性が高まり、LTE方式の通信機器の需要が国内外で急増し、輸出も増えるからだ。
しかし、これまでLTEと競合しつつ、次世代通信技術の世界標準となることを目指してきたワイブロ陣営は困難な状況に置かれることも事実だ。
エリクソンはノキアなどと共にLTEの基幹技術を保有しており、ワイブロ陣営のサムスン電子やインテルなどはライバルになる。いわばエリクソンの韓国進出は、敵地に乗り込んで開発競争を仕掛けるようなものだ。
これまでワイブロの輸出を支援してきた韓国政府も、国内でワイブロが不振を極めるなか、エリクソンの投資を歓迎する立場だ。しかし今回の投資誘致は、「ワイブロ育成」という従来の政府方針と相反するため、李大統領も国内ワイブロ市場が侵食される恐れがないかどうか調査するよう求めたといわれている。
通信業界でも、「エリクソンの投資に喜ぶばかりではなく、ワイブロ市場の保護対策を練るべきだ」との声も出ている。移動通信技術の開発は4Gへと進んでいるが、通信市場の主流は2Gと3Gの中間程度であるという現実も無視できない。普及が遅れているワイブロへの大型投資を誘導してきた政府への失望も高まっている。
ノキアやアップル、グーグルなどのグローバル企業が未来の成長動力に挙げるモバイル・インターネットを育成するためには、大容量の無線インターネット通信を格安で提供できるワイブロが有望だとの意見も根強く残っている。