長引く不況で、雇用問題が再燃する兆しを見せている。失業者数が再び増加する傾向を見せるなか、「非正規職保護法」により雇用期間が2年と定められた非正規職(契約社員)が7月1日以降、契約満了により大量解雇される深刻な事態が予想されるからだ。
統計庁が発表した「5月雇用動向」によると、先月の新規就業者数は前年同月に比べ、21万9000人減少した。これは、1999年3月に記録した39万人減に次ぐワースト記録だ。
当初は雇用事情を楽観視していた政府も、この結果に当惑している。雇用の減少こそ阻止できないとしても、減少速度はやや鈍化するのではないかと予想していたふしがある。
実際、4月の新規就業者数は前年同月比18万8000人減で、減少幅は3月(同19万5000人減)より縮小していた。失業者数も3月の95万2000人をピークに、4月は93万3000人に減少している。
ところが、5月に入ると、失業者数は前月比5000人増の93万8000人となり、再び増加に転じた。これについて政府は、「これまで無職だった人が就職活動を始め、統計上では失業者に分類されたため、一時的に失業者数が増えた」と説明している。グローバル不況の影響で就職を諦める人が増えた年初に比べれば、雇用状況は改善に向かっているというのが政府の見方だ。
しかし、7月1日から契約期間が満了する非正規職労働者の雇用問題が、ようやく回復の兆しを見せる景気に冷や水を浴びせる事態になると憂慮している。
非正規職保護法は非正規職の雇用期間を2年と定め、企業が2年後も継続して雇用する場合は正規職に切り替えなければならないという内容。企業側が人件費の安い契約社員ばかりを雇用しないようブレーキをかける目的で作られた法律だ。
ところが、景気低迷による実績悪化を理由に、非正規職を正社員に切り替えるどころか、契約期間満了により非正規職を解雇する企業が続出するのではないかとの見方が労働界で出ている。この7月以降、2年間の契約期間が切れる非正規職労働者の数は70万~100万人と予想されている。このまま何の対策も講じないで7月を迎えると、失業者が大量に発生する深刻な事態に陥る可能性がある。
政府と与党ハンナラ党は、非正規職の雇用期間を4年に延長する法改正を検討したが、野党などの反対で頓挫している。とりあえず、法の適用を2年遅らせることで政府与党間で暫定的に合意したが、これについても野党が「問題を先送りにしたにすぎない」と反発していて、国会の承認を得るのは難しい状況だ。
このような国会の迷走に加え、負債の多い不良企業に対する構造調整が本格的に始まると、正規職さえも失業する最悪の事態に発展する可能性もある。このため雇用状況の改善には相当な時間がかかり、生活基盤がぜい弱な低所得者層ほど雇用寒波の最大の被害者になると見られている。