錦湖アシアナグループが3年前に買収した大宇建設を売却する。大企業のM&A(合併・買収)を相次いで行ったことによる資金繰りの悪化で、グループ全体の経営が揺らぐことを防ぐための苦肉の策といえる。しかし、韓国で最大規模といわれたM&Aが、わずか3年で失敗に終わったことの影響は甚大だとの指摘が出ている。
錦湖アシアナグループの債権団は先月29日、資金難解消のため大宇建設をグループから分離、売却するとことを決めた。経営権を含む公開売却が成功すれば、少なくとも3兆ウォン程度の資金を確保することになり、資金難を脱する見通しだ。
株式の売却方法としては、①金融機関の持ち分39%+経営権②50%+1株③金融機関と錦湖の持ち分(33%)を合わせた72%の3案が検討されている。最終的な売却方法は主債権銀行である産業銀行との協議で決まるが、当面は公開売却を優先し、買い手が現れない場合は産業銀行が造成する私募ファンド(PEF)への売却を進める。
錦湖アシアナは6月1日に産業銀行と財務構造改善の約定を結び、7月末までに新規の買い手が見つからなければ大宇建設を売却するとしていた。しかし、新規の投資家との交渉が難航したうえ、金融当局の圧力もあり、早期売却に動いたと見られている。
錦湖アシアナは2006年6月に未来アセットなど18の金融機関を引き入れ、大宇建設の株式72%を一株当たり2万6262ウォン(計6兆4255億ウォン)で買い取った。
ここで問題となるのは、買収から3年後となる09年末の時点で、大宇建設の株価が3万1500ウォンを下回った場合、金融機関から一株当たり3万2450ウォンで株式を買い戻す「プットバックオプション契約」を結んでいたことだ。現在、大宇建設の株価は1万3000ウォン程度で、金融機関がこの権利を行使すれば、錦湖アシアナは4兆ウォン以上を支払う義務(売却損)が生じる。このため同グループの流動性危機説がささやかれていた。
これについて債権団は、錦湖アシアナが経営権を買い手に委譲する場合、プレミアムとして20~30%を上乗せできるので、最終的には大宇建設株を3億5000万ウォンで売却できると説明している。
さらに、錦湖生命やソウル高速バスターミナルなどの持ち株など資産を売却することで、1兆5000億~2兆ウォンを追加で調達できるとしている。一山大橋の株式など保有資産を売却すれば、大宇建設株売却による損失を十分に埋めることはできると主張している。
売却先候補にはLGグループ、ロッテグループ、ポスコなどが挙げられているが、いずれも大宇建設の買収に「関心はなく、検討もしていない」とコメントしている。現在の景気状況では大手建設会社を買収する好機ではないからだ。
錦湖アシアナは大宇建設買収後も、大韓通運を4兆1000億ウォンで買収するなど、大型のM&Aを相次いで行った。財界での順位は以前の11位から8位へと上昇したが、その代償として財務の健全性が悪化し、大宇建設を放棄することになった。M&Aはリスクも大きいという教訓を今回のケースが示している。