昨年、ウォン安効果で輸出が回復し、危機から立ち直った韓国企業だが、主要輸出先の先進国で景気低迷が続くと予想されるなか、今年はどうなるのか。韓国産業研究院(KIET)の「2010年韓国産業展望」をもとに、主要産業の今年の生産、内需、貿易の行方を探る。
◆生 産◆
2010年の製造業の生産は、前年同期の水準が低かったことへの反動で輸出と内需が増加するため、ほとんどの業種で増加に転じるなか、IT(情報技術)産業が製造業の成長をリードする。
ディスプレーは、上半期のワールドカップ特需と下半期の需給ギャップ解消により、昨年の増加傾向が続き、実質11・2%増の堅実な生産増加率を記録する。半導体は海外メーカーの設備投資が遅れるなか、海外需要の回復と相まって6・0%増えるが、増加率は昨年の16・8%から10ポイント以上低下する。
情報通信機器は、国内外で高機能携帯電話の需要が増えるほか、ウィンドウズ7発売効果や国内通信装備の需要増など、全般的な内需と輸出の回復により昨年のマイナス8・2%から7・1%増にプラス転換する。家電は、ワールドカップ特需にともなう需要増が期待されるものの、個別消費税への負担から大型家電の売り上げが鈍化するため、2・1%増にとどまる。
機械産業の生産は、業界ごとに明暗が分かれ、一般機械と自動車が増加傾向を見せる半面、造船は大幅に減退する。
一般機械が国内設備の投資拡大と海外の需要増により、増加率は昨年のマイナス13・5%から9・1%増にプラス転換する。自動車も内需が減少するものの、新興市場への輸出増が期待され、昨年のマイナス10・4%から6・7%増に反転する見通しだ。
造船は昨年、8・2%の高い増加率を記録したが、今年は世界の船会社が一様に財政悪化に陥り新船の引渡し時期を延期している影響で前年比8・0%減に落ち込むと予想される。
鉄鋼、石油化学などの素材産業は業種ごとに生産増加率の格差が広がる傾向にあり、鉄鋼が好調と予想される。鉄鋼は新増設の設備が稼働するほか、土木用鉄鋼製品の輸出および内需拡大、さらには流通および在庫需要の増加などにより昨年のマイナス12・9%から13・0%増に転換する。
石油化学は、内需が緩やかに成長すると見込まれ、生産設備の大幅拡張と輸出好調により昨年とほぼ同様の6・0%を記録するもようだ。繊維はグローバル景気の回復による輸出増と内需の拡大で、昨年のマイナス1・8%から3・2%増となる見込みだ。
◆輸 出◆
輸出は、ウォン・ドル為替レートがウォン高傾向が強まるなか、成長が見込まれる中国と新興国市場への輸出好調により、主力10大業種の輸出増加率は前年より10・8%増え、2008年とほぼ同じ水準に戻る。
IT産業は15・2%の高い増加率を示し、製造業の輸出を先導する。半導体はワールドカップや上海万博、ウィンドウズ7の発売、デスクトップPCの買い替えやネットブック人気などで輸出増加率は17・0%に達する。ディスプレーは、中国の景気浮揚、各国での地上デジ放送開始、ワールドカップ特需にともなう全産業の需要増により15・1%増となる。
家電も、ワールドカップ特需と韓国家電企業のブランド力および競争力の向上、中国経済の持続的成長などの後押しを受け、13・4%増を記録する見込みだ。情報通信機器は世界市場の回復と3G・スマートフォン市場の拡大、ウィンドウズ7発売にともなう需要増などで14・3%増が予想される。
素材産業は、輸出が好調な鉄鋼と繊維分野を中心に11・8%増と予想される。鉄鋼は先進国での需要回復や、中国・中東など新興国の需要増、さらには国際価格の回復などで14・1%増となる。繊維もアジア諸国への輸出が好転するため11・5%増となる。石油化学も中国の需要が堅実に伸びており10・0%増える。
機械産業は、自動車と一般機械が好調な半面、造船が不振に陥るため、他の産業に比べ相対的に低い5・9%増にとどまる。自動車は主要国の景気浮揚策が終了するなか、世界市場での競争が激化するが、新興国などで小型車の需要が増えるため、昨年のマイナス28・2%から今年は17・8%増にプラス転換する。
◆輸 入◆
10大産業の輸入増加率は、昨年マイナス24・0%を記録したことの反動で、前年比12・4%に上昇すると予想される。
IT産業は、輸出向け製品に使われる部品の輸入需要が拡大するほか、海外生産品や部品の逆輸入が増え、外国ブランドによる韓国市場攻略が強化されるため、14・8%増となる。半導体は、輸出品のデジタル家電や携帯電話に使われる非メモリー半導体の輸入増により15・8%増の見通し。家電は、ウォン高による輸入単価の下落で輸入が増えるほか、輸出用部品の輸入も増え、14・8%増加する。情報通信機器は、携帯電話関連部品の輸入増と外国メーカーの国内進出などにより13・8%増える見込みだ。
機械産業は、輸入車の増加と外国製設備の導入が増え11・0%増の見通し。自動車は外国車の価格引下げにより、ハイブリッド車などの輸入が進み14・1%増となる。造船は建造量の縮小で中国からの船舶ブロックの輸入が減るため、マイナス7・5%に落ち込む。
素材産業は、海外生産品の逆輸入が増え、10・6%増にとどまる。繊維は、輸入単価の下落と、内需回復にともなう高付加価値製品の輸入回復などで13・4%増となる。鉄鋼は熱延鋼板と厚板の新増設設備の本格稼働で国内供給が増えるため、8・2%にとどまる。石油化学は、ナフサの価格上昇や、中東産低価格品の流入、建設部門の需要拡大で14・7%増と予想されている。
◆内 需◆
2010年の内需は相対的に高い増加が予想されるIT産業がけん引すると予想される。IT産業は、ウィンドウズ7の発売効果やワールドカップ特需、高機能携帯の市場拡大、LED(発光ダイオード)テレビと太陽電池の需要増などにより、内需増加率は前年比12・7%と、他の産業群より高めの成長が見込まれている。
ディスプレー産業は景気の底打ちを追い風に、ネットブックやノートパソコンなどの需要増や、価格が下落傾向にある液晶テレビの需要増などで、昨年のマイナス48・5%から41・0%増に転換するなど、高い内需増加率を記録する。情報通信機器も高機能のスマートフォンや3G高速通信機器への買い替え需要、通信網整備への投資拡大にともなう関連装置の需要が拡大するなど、15・1%の堅調な伸びをみせる。
半導体は地デジ放送対応テレビの価格下落にともなう需要拡大や、スマートフォンと自動車の輸出好調、LED(発光ダイオード)と太陽電池などの需要増で7・4%増となる。家電はワールドカップ特需によりデジタル映像機器の需要が増えるほか、地上デジタル放送への転換を促すための低価格テレビ普及政策などの後押しを受け、3・8%増となる見込みだ。
機械産業では、一般機械の内需は増加するものの、自動車と造船は不振が予想される。一般機械は、機械メーカーの投資心理が改善されるほか、老朽施設の入れ替えにともなう設備投資の拡大で12・5%増となる。ただし、自動車は中古車買い替え時の税減免制度の終了と家計負債の増加にともなう購買力の減少でマイナス1・4%に落ち込む。
素材産業では、鉄鋼が好調を見せるなか、繊維と石油化学は緩やかに需要が回復する。鉄鋼は建設および設備投資の回復で、在庫不足を補うための在庫需要が増え、17・6%増となる。石油化学は自動車産業の好調や、4大河川開発事業など建設部門の需要増加により5・0%の増加となる。繊維は衣類の消費や、生産増による繊維素材の需要が拡大するため、4・5%増が予想されている。