ブラジル高速鉄道建設事業の受注をめぐり、韓国、日本、中国のアジア3国を含む6カ国の競争が激化している。事業規模は約200億ドルで、韓国政府と現代ロテムを中心とする企業連合が官民合同で受注戦を展開している。韓国が事業者に最終選定されると、昨年暮れにアラブ首長国連邦(UAE)から受注した400億ドル規模の原子力発電所建設工事に次ぐ海外大型案件の受注となる。
ブラジル高速鉄道建設事業はリオデジャネイロ~サンパウロ~カンピーナス間の総延長511㌔㍍区間を結ぶもの。ブラジル政府が重点を置くインフラ拡充プロジェクトのひとつだ。今年中に着工し、リオデジャネイロ夏季五輪が開かれる2016年上半期の完成をめざしている。
平均時速は280㌔で、リオデジャネイロ~サンパウロ間の運賃は206・15ヘアル(約114・5㌦)となる見込み。
高速鉄道の優先交渉対象事業者は5月末ごろに決まる予定で、現在、韓日中3国のほかに、フランスのアルストム、ドイツのシーメンス、スペインのカフ・タルゴなどの車両メーカーも入札に関心を見せている。現地の日刊紙フォーリャ・デ・サンパウロは、「6カ国のうち、アジア3カ国がもっとも積極的だ」と近況を伝えた。
韓国からは、高速鉄道(KTX)の車両製作技術を保有する現代ロテムが、コレイル(韓国鉄道公社)や鉄道施設公団、サムスン、現代などとコンソーシアムを組み、さらに現地企業のグルポ・ベルティンとの連合体で受注活動を続けている。
一方、日本企業も三井物産、三菱重工業、東芝、日立製作所、JRを中心とする企業連合が、現地の企業グループ、アンドラデ・グティエレスと協力関係を結んだ。中国は、ブラジル最大の建設会社、オーデブレヒトと協力するか、単独で入札するとみられている。
今回の受注戦は各国政府の代理戦争の様相も呈している。韓国は外交力を総動員して受注を勝ち取る戦略だが、日本と中国を不必要に刺激することのないよう、可能な限り非公開でロビー活動を進めている。
ブラジル政府は入札条件として、価格だけでなく技術移転も重視しているとされる。今回、応札した企業に、サンパウロとブラジル南部のミナス・ジェライス、パラナ州などを結ぶ高速鉄道の建設を任せる構想もあるという。
ブルームバーグによると、ブラジル陸上交通局幹部は最近、「技術的な面では6カ国のうち、韓国がもっとも有力だ」と語ったといわれる。韓国が受注する場合、韓国型高速鉄道の車両及び運営システムの輸出、韓国の建設企業の進出拡大など多くの経済効果が期待できる。
しかし、日本政府は原発など海外の大型案件受注競争で日本勢の敗退が目立つなか、国際協力銀行による融資やブラジル政府への円借款供与などを検討しているといわれ、楽観は許されない状況だ。