韓国の公営企業や年金基金などが海外資産の買収を積極的に展開している。世界金融危機以降、多くの不動産やインフラ(社会的関節資本)などが市場に売りに出されており、それらを次々と買い取っている。また経営が悪化した外国企業を対象にM&A(企業合併・買収)攻勢を強めている。
国民年金が10億ドルを投じて、米国の送油管会社「コロニアルパイプライン」の権益を30~40%を買収する交渉を進めている。パイプラインはヒューストンからニューヨークまでを結ぶもので、全長8900㌔㍍に達する。この買収に成功した場合、韓国は米国の中核を担うインフラの莫大な権益を得るわけだ。コロニアルパイプライン社は、2008年9月のリーマン・ショックの影響で、経営難に陥っていた。
国民年金の関係者は「米国の石油パイプライン売却入札に参加した。今月末ごろ優先交渉対象者が決まる予定」と説明している。買収が成立すれば、国民年金は同社の大株主となる。投資額10億㌦は、韓国の海外投資事業(エネルギー関連)の中で最大規模となる。
同関係者は「1日3億9800万㍑のガソリンを送油するパイプラインを買収すれば、安定的な配当と資産価値の上昇が期待できる」と話す。
国民年金が買収または推進中の案件は、これだけでない。仏のショッピングモール、オ・パリノ(3500億ウォン)、英のHSBC本社ビル(1兆5000億ウォン)と独のソニーセンター(8500億ウォン)などで、海外不動産保有高は3兆5000億ウォンに達する。
国民年金は、現在10%である海外資産の比重を5年以内に20%(約100兆ウォン)へ高める計画だ。そのために、毎年10兆ウォンを超える新規投資が必要となる。今年に入ってからは、米国シティ銀行の持ち分購入とスペイン道路事業の投資も検討している。
他の年金基金も、海外投資の比重を拡大している。最近、教職員共済会は米・サンフランシスコのビル(3億3300万㌦)に970億ウォンを投資した。私立学校教職員年金も、東京のオフィスビル2カ所に385億ウォンを投じている。
教職員共済会は「国内で特定案件に限定して投資するPF(プロジェクトファイナンシング)の不動産事業は多くない。いまは、金融危機の余波で構造調整に入った米国などの成長性が高い」と判断している。
年金基金が金融危機の過程でリスク分散の必要性を感じたことも理由に挙げられる。世界経済が不況に入れば、ウォンの価値が下がる。そのため海外資産、特にドル建て資産の価値が相対的に高まり、リスク分散効果を期待できるためだ。1997年末の通貨危機を経て、不況期の資産投資が効果的と考えるようになったことも背景にある。