東日本大震災は、韓国の産業界にも大きな影響を及ぼすと予想されている。対日依存の高い部品・素材などの供給に支障をきたすと見られるからだ。部品・素材の対日輸入は昨年381億ドルに達し、全部品・素材輸入の約25%を占めた。地震被害で多くの工場が打撃を受けており、自動車、半導体、LCD(液晶ディスプレー)、造船などで影響が避けられなくなっている。
大韓貿易投資振興公社(KOTRA)は、特に対日輸入額が大きい電子部品(68億㌦)や、石油化学(46億㌦)、精密化学(45億㌦)、産業用電子製品(30億㌦)の部門で大きな影響があると分析している。中でもLCDは日本からの部品輸入比率が20%、半導体も30%を占めており、日本からの輸入がストップすれば影響は甚大だ。
KOTRA関係者は、「日本から輸入する輸出用部品・素材の輸入比率は4分の1に達する。部品調達が困難になれば、韓国での製品生産にも蹉跌が生じざるを得ない」と語った。
サムスン電子、ハイニックス半導体、LGディスプレーは、ウエハー、フィルムなど半導体やLCDの生産に必要な素材の確保に追われている。シリコンウエハー世界最大手の信越半導体の白河工場(福島県西郷村)と業界2位のSUMCOの工場が操業を中断しており、韓国の半導体業界関係者は「日本企業の操業中断が長期化すれば、韓国のどの企業も安心することはできない」と指摘した。
LG電子は、地震発生と同時に危機対応総合状況室を稼働させ、LGディスプレーもLCD用事業部と半導体事業部を中心に対策を指示。半導体感光液とLCDのフィルム原板を日本から輸入しているサムスン電子の関係者は、「短期的には在庫を確保しているが、長期化すれば影響を及ぼす可能性があるので状況を綿密に検討している」と語った。
グローバル市場で供給不足に対する憂慮があるだけに、日本から調達できない物量を代替する方策も急がれている。
鉄鋼の需給蹉跌が生じる恐れもある。韓国の自動車と造船メーカーは、日本から毎年800万㌧の鉄鋼材を輸入しており、船舶用厚板の場合、20~50%を日本に依存している。
韓国最大手の自動車部品メーカーの万都は、東日本大震災による影響で、ブレーキやステアリングなど年間550万個生産している主力部品の生産ができなくなる恐れも出ている。同社はこれら部品に使われる電子制御装置用の部品を日本から輸入しているが、地震の影響で同部品を生産する工場の操業が全面的に中断したためだ。万都が生産するブレーキ、ステアリングは、現代・起亜自動車の主力車種に搭載されているため、韓国の完成車生産にも影響が出かねない状況だ。
現代・起亜自動車も14日、購買規格チームの非常対策会議を開いた。現代自動車本社の購買本部関係者は「日本製部品への依存度は低いが、自動車産業の特性上、日本から輸入する部品が1個でも調達できないと、生産に支障が出る可能性がある」と説明した。現代モービスなどの部品メーカーは、日本のアルプス電気、スタンレー電気からさまざまな電装部品を調達している。両社は地震による大きな影響を受けており、部品供給の障害が懸念されている。
一方、韓国企業が2009年に日本の東北地域に輸出した金額は261億円で、韓国の対日輸出の1・3%にすぎず、同国への輸出に大きな打撃はないとみられる。現在日本では、270社余りの韓国企業が法人、事務所、支店などを設置しているが、大半が生産工場ではないため、地震による直接的な被害は少ないと推定された。ただ、地震被害の大きかった仙台地域に物流拠点を構えるロッテ酒造は2~3億㌦ほどの損害が発生した。