欧州の財政危機などで世界市場が急速に委縮するなど次第に厳しさを増す経済環境に対応すべく、各財閥グループはトップが中心になってグローバル活動を強化する動きを活発化させている。サムスン、現代自動車、GS、ロッテ、ポスコなどの主要大企業トップCEO(最高経営責任者)らが相次いで海外進出し、現地事業を把握するなど先頭に立って動いている。「ピンチをチャンスに変えよう」と危機対応にとどまらず、新たな市場開拓をめざしている。
李健熙(イ・ゴニ)・サムスン電子会長は、昨年3月に経営復帰後、初めて北米出張に出た。鄭夢九(チョン・モング)・現代自動車会長は、欧州市場の点検を進めている。許昌秀(ホ・チャンス)・GSグループ会長は、初めて中国で社長団会議を開いた。
電子業界関係者は、「最高経営陣のこのような動きは海外法人の駐在員らは緊張の度を強めている」として、「グループのトップがグローバル市場の点検に乗り出すほどに、下半期と来年の輸出環境が厳しいことを窺わせる」と語った。
先月27日から米国訪問を開始した李健熙会長はサンフランシスコ、ニューヨークなどをめぐった後、東京に向かう予定だ。現地関係者らと会って、スマートフォン、タブレット端末、テレビ、冷蔵庫などの販売状況を総合点検中だ。李会長は今回の出張について、「世界景気は、当分の間このまま行くのではないか。このような状況でも継続してトップの座を守らなければならない」と強調した。
崔志成(チェ・ジソン)・サムスン電子副会長も9月にデンマーク、ポーランド、ドイツ、ウクライナ、ロシア、カナダ、米国、メキシコなどを休む暇なく歴訪。「状況は良くないが、シェアを最大限引き上げる努力を傾ける」と力説した。
現代自動車の鄭夢九会長は、9月20日からチェコの現代自動車工場に続いて、ドイツのフランクフルトにある現代・起亜自動車欧州販売法人を訪れ、販売戦略と品質を再点検するなど現地指導を強化した。
鄭会長は、欧州戦略車で攻撃的なマーケティングを展開するよう指示した。現代自の場合、中型ワゴン「i40」と準中型ハッチバック「i30」を欧州戦略車に指定している。起亜自も最近、フランクフルト・モーターショーで「プライド」の新車を発表した。
鄭俊陽(チョン・ジュニャン)・ポスコ会長は、9月にトルコでアブドゥラー・ギュル大統領と会い、トルコでのステンレス冷延工場着工を契機に資源開発協力の可能性も打診。また、パキスタンも訪問、TSML社の株式15・34%を取得する契約締結に成功した。
許昌秀・GSグループ会長は、04年にLGグループから分離し独自のグループを創設して以来初となる海外社長団会議を中国・青島で開催した。許会長は「中国は生産拠点から世界の消費市場へと変貌している。中国市場の変化を正しく理解し、ビジネスチャンスを模索しなければならない」と強調した。
GSグループ関係者は「今回の会議の目的は世界的経済危機という状況の中でも成長し続け、世界経済の中心に浮上している中国市場の変化を、グループ各社の社長が直接視察することにより肌で感じ、新たなビジネスチャンスを模索することにあった」と語った。
辛東彬(シン・ドンビン)・ロッテグループ会長は9月に中国瀋陽でホテル、百貨店、大型マートなどが入る大型ショッピングモール建設のための現地政府関係者と会うなど活発な活動を展開。今月3日の役員会議では「3年前の世界金融危機の際もピンチをチャンスに変え、海外の優良企業を買収した経験がある。景気が低迷している時がむしろチャンス」と述べ、M&Aを積極的に検討するよう指示した。
同グループは08年10月にインドネシアで大手スーパーチェーンを買収。09年1月には韓国の焼酎メーカー斗山酒類BGを買収した。辛会長の方針を受け、グループ傘下のロッテ百貨店とロッテマートの社長らはインドネシアやベトナム、中国などの海外事業所を視察し、営業状況を綿密に点検したという。また、グローバル展開強化のために専門家の育成にも本腰を入れている。