韓国のFTA(自由貿易協定)網が拡大しているが、FTA発効による貿易拡大効果が顕著になっている。外交通商部や国際貿易研究院などによると、一番最初のFTA発効国である対チリ貿易は昨年、71億7000万ドルに拡大し、発効前の03年の15億8000万ドルに比べ4・5倍も増えている。また、ASEAN(東南アジア諸国連合)との貿易額も、発効後4年間に664億2800万㌦から1067億9300万㌦へと60・5%増えている。また、農産物など一部産業の被害が予想されるが、これまで発効したFTAの結果を見る限り、大きな打撃はなかった。これは構造調整などが順調に進んだ結果と分析している。
2004年の韓・チリFTA発効に伴って、韓国の対チリ輸出は昨年まで年平均33・9%増加を記録。対チリ輸入増加率(26・8%)を上回り、輸出効果の方が大きかったことを示した。
チリに輸出される韓国商品の平均関税率はFTA発効前に6・0%だったが、発効初年度に2・91%へ大幅に下がった。07~08年には1%台となり、今年は0・54%までに低下。これが貿易量に反映された。対チリ輸出は発効前の03年に5億2000万㌦だったが、昨年は29億5000万㌦へと5・7倍増加。同期間、輸入も10億6000万㌦から42億2000万㌦へ4倍増えた。
対チリ輸出増大で、同国での韓国産自動車のシェアは大きく拡大した。03年には16・1%で、日本車のシェア29・5%の約半分に過ぎなかった。だが、昨年は32・8%を記録し、初めて日本車のシェア(28・2%)を上回った。
また当初、韓・チリFTA反対論として、国内ブドウ産業の被害が挙げられたが、心配されるような被害はなかった。
農林水産食品部によれば、国内のブドウ生産量は03年の37万6000㌧から昨年には30万6000㌧に減ったが、それでも大幅な落ち込みはなく30万㌧以上を維持している。政府関係者は「FTA発効を前にし、一部農家が早期に廃業支援金を受け取って構造調整に入ったという影響はある。だが、チリ産の輸入量が予想ほど多くなかったうえ、その間に国内農家の生産性が向上した」と説明した。
ASEANとのFTA発効効果も大きかった。発効前の06年6月~07年5月の対ASEAN輸出額は353億2700万㌦だったが、4年後(昨年6月~今年5月)には594億6700万㌦へと68・3%増加した。
輸入額は、同期間に301億1000万㌦から473億2600万㌦へ52・2%増えた。全体貿易額は664億2800万㌦から1067億9300万㌦へ増加し、FTA発効から4年で1000億㌦を突破した。暦年でみれば、対ASEAN貿易は、昨年は973億㌦(輸出532億㌦、輸入441億㌦)だった。
このほかに、06年にFTAが発効したシンガポールの場合、貿易額は05年の127億㌦から昨年は231億㌦に、貿易黒字も21億㌦から74億㌦に拡大した。
EFTA(欧州自由貿易連合)との貿易額は、FTA発効前の05年が39億㌦だったが、昨年は92億㌦となった。また、昨年1月にCEPAが発効したインドとの貿易額も122億㌦から昨年は171億㌦に急増した。今年7月に発効したEU(欧州連合)と8月発効のペルーとも、貿易拡大傾向にある。
外交通商部によると、現在、韓国とFTAまたはCEPA(包括的経済連携協定)を発効済みのチリ、シンガポール、EFTA、ASEAN、インドとの貿易額の合計は、昨年1538億8000万㌦。輸出額863億4000万㌦、輸入額675億4000万㌦で、貿易収支は188億㌦の黒字だ。
昨年の韓国の貿易額は8915億㌦で、貿易黒字は484億㌦。FTAやCEPAを締結した国が占める貿易比率は17・3%、貿易黒字比率は39・0%になる。