ポスコが世界で初めて、塩水に化学反応を起こしてバッテリー原料のリチウムを直接抽出する技術開発に成功した。これにより、リチウム生産に要する期間を従来の1年から1カ月へと大幅に短縮することが可能になった。ポスコは新技術を使い、海外のリチウムメーカーと共同で、現地にリチウム抽出工場を建設する計画だ。
ポスコは、昨年7月のパイロットプラント竣工後、慶尚(キョンサン)北道にあるポスコ傘下のRIST(浦項(ポハン)産業科学研究院)で、塩水からリチウムを抽出。実験を重ね、1000㍑の塩水からリチウム5㌔を製造するのに成功した。先週末、訪韓したエチャス・ボリビア蒸発資源局長をRISTに招いて、この新技術を披露。これまでの実験では人工塩水を使ったが、今回はボリビアのウユニ塩湖の塩水1万5000㍑を使用してリチウムを抽出した。
塩水からのリチウムを抽出は、これまで最短で1年かかった。塩水を自然蒸発させる方式をとっていたからだ。また、塩水に含有されたマグネシウムなどが不純物状態で残り、再精製しなければならなかった。
このように多段階のプロセスが必要だったが、リチウムを直接抽出する新技術は抽出時間を大幅に短縮させた。また、リチウムを抽出する回収率をこれまでの50%から80%以上に引き上げることが可能になった。
エチャス局長は「これほど回収率が高いとは本当に驚いた。今後、ポスコ側と新技術を活用した共同事業の推進を協議する」と述べた。権五俊(クォン・オジュン)・ポスコ副社長は「新技術を採用すれば、リチウム以外にも塩水に溶けているマグネシウム、カルシウム、カリウム、ホウ素などの元素を分離抽出し、資源化することができる」と説明した。
ポスコは新技術に関連し、国内外で約30件の特許を申請した。ポスコ関係者は「海外現地でリチウムを生産して国内に供給すれば、全量輸入に依存するリチウムの需給安定で、国家競争力が大幅に強化される」と語った。
現在、中国、米国、スイス、フィンランドなどがリチウム確保戦に乗り出している。ポスコがリチウム抽出新技術の開発に成功したことで、韓国はボリビアのリチウム開発事業参加で優位に立ったといえそうだ。
ポスコ関係者は「技術開発段階からボリビア進出を念頭に置き、政府と緊密に協議してきた。新技術を適用したリチウム生産施設が稼働すれば、鉱山の開発への参加に役立つ」と語った。
◆リチウムとは 年間15億5000万台に達する携帯電話端末などのモバイル機器や電気自動車などのバッテリーに欠かせない素材。韓国は現在、世界1位のリチウムバッテリー生産国だが、使用するリチウム1万2000㌧はすべてアルゼンチン、チリからの輸入に依存している。
リチウムは鉱石にも存在するが、ほとんどは塩水に溶けている。リチウム含有量が高い塩水はチリ、アルゼンチン、ボリビア、中国など一部の国にのみ存在する。ボリビアは特に、世界埋蔵量の50%にのぼる540万㌧のリチウムを保有する資源大国。最近はウユニ塩湖資源開発事業を本格的に推進している。