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2012/06/15

<韓国経済>バイオ企業のセルトリオン・バイオシミラーの薬効立証

  • バイオ企業のセルトリオン・バイオシミラーの薬効立証①

    ベルリンで行われた欧州リウマチ学会の年次学術大会で抗体バイオシミラーの臨床試験の結果を発表したセルトリオンの展示ブース

  • バイオ企業のセルトリオン・バイオシミラーの薬効立証②

                   セルトリオン会長

 国内のバイオ製薬会社セルトリオンのバイオシミラー「CT―P13」が、オリジナル医薬品と同等の薬効および安全性を持つことが判明した。同社は、ドイツ・ベルリンで開かれた「2012欧州リウマチ学会(EULAR)」で、世界で初めてバイオシミラーの臨床結果を公開。ジョンソン・アンド・ジョンソンのリウマチ関節炎治療薬「レミケイド」と「CT―P13」の同等性を立証し、バイオシミラー時代を切り開くことになった。

 バイオシミラーとは、特許期間が過ぎたバイオ新薬を複製した医薬品をいう。通常、市販されている複製薬はジェネリックと言われ、単純な複製で済む。だが、バイオ新薬は動植物の組織を活用しているため、複製は非常に難しいとされているだけに、今回世界で初めて臨床結果で薬効を立証した意味は大きい。

 現在のリウマチ関節炎の抗体治療薬市場は200億㌦規模であり、10年以内に800億㌦水準に拡大すると予想されている。オリジナル医薬品に比べて安価でありながらも同等の効能を持つバイオシミラーが発売されるようになれば、製薬産業の再編が起きる見込みだ。

 セルトリオンは2002年から「CT-P13」の開発に着手し、以後10年間に開発費だけで2000億ウォンを投じた。複製薬であるにもかかわらず、莫大な投資費用と期間が必要だった。

 生きたタンパク質を活用するバイオシミラーは、工程環境がその都度違ってくる。タンパク質の塩基配列が同じ医薬品を開発しようとしても、オリジナル医薬品と同じように作ることができない。そのため「全く同じ」でなく、「似ている」ことを意味するシミラーと表記されている。

 これまでグローバル製薬会社はオリジナル新薬を開発してきたが、バイオシミラーに対してそれほど注目しなかった。すでにオリジナル薬がある中で、敢えて複製薬を作る必要がなかったためだ。

 しかし、オリジナル・バイオ医薬品の薬価が非常に高いことから、セルトリオンは10年前に安価で同じ薬効を持つバイオ複製薬の開発に乗り出した。

 今回のセルトリオンの臨床報告書は10年間の結実といえる。だが、まだCT-P13は市販に至っておらず、完全な成功と言えるまでには時間がかかる。今月末には国内での食品医薬品安全庁の許認可を控えており、欧州医薬品機構の審査も進行中だ。朴ウォン・仁荷大病院教授(リウマチ内科)は、「発売後に世界各国で信頼を得ることが鍵だ」と話した。

 セルトリオンの徐延珍(ソ・ジョンジン)会長は「最近、バイオシミラー市場に進出する企業が非常に増えた。我々は10年間準備したおかげで、先んじる自信がある」とした上で、「(バイオシミラーの)生産施設の構築だけで4~6年を要する。早期の市場先行獲得が勝敗を分けるだろう」と語った。


 ◆バイオシミラー 薬には大きく分けて低分子を化学合成してつくる「化学合成薬」と、遺伝子組み換え技術を応用して生産される「バイオ医薬品」とがある。風邪薬など一般的な薬の多くは化学合成薬。インターフェロンや成長ホルモンなどがバイオ医薬品だ。

 バイオシミラーとは、これらバイオ医薬品の特許が切れた後に、別の会社が先行薬に似せて製造した薬の総称。化学合成の薬の特許消滅後に発売される「ジェネリック医薬品」(後発薬)は知られてきているが、バイオシミラーはバイオ医薬品におけるジェネリックのようなものだ。特にバイオ医薬品は高額なものが多く、患者の負担軽減につながる。