ウォン高・円安が急ピッチで進み、韓国の警戒感が高まっている。韓国銀行によると、ウォンの対円レートは第1四半期(1―3月)の平均で100円=1177・3ウォンを記録した。前期比169・1ウォンのウォン高で、円に対する切り上げ幅は14・4%に達した。2009年第4四半期(10―12月)の15・1%以来最大の上昇幅となった。急激なレート変動を受け、尹相直(ユン・サンジク)・産業通商資源部長官は21日、インドネシアのスラバヤで会談した茂木敏充・経済産業相に対して善処を促した。
会談で尹長官は「最近の急速なウォン高・円安は韓国の産業界に痛手だ。通貨当局に伝えてほしい」と懸念を示した。 茂木経済産業相は「円安ではなくデフレ脱却のためにやっている。当局には伝える」と答えた。
日本の無期限量的緩和政策で進んだ急激な円安は、韓国製品の価格競争力を弱め、韓国経済を支えている輸出に大きな影響を与え出した。内需と不動産景気が低迷する状況で、輸出まで低迷しているため、韓国では「アベノミクス」に対する懸念が広がっている。
企画財政部は、まだ円安による輸出鈍化が本格的に進んでいないと判断しており、為替レートの影響が以前より小さくなったとみている。韓国製品のブランド力と品質競争力が高まったためだ。
しかし、世界経済の本格的な回復が遅れている状況で円安が続けば、韓国経済も影響を避けられない。特に、日本と競合する自動車・機械分野で輸出被害が大きくなると予想している。
株式市場でははっきり数値に表れている。今年1月から今月12日までに海外投資家による日本株の買い越し額は累計644億9800万㌦に達した一方、韓国では同期間に32億4100万㌦の売り越しとなった。円安効果で日本に資金が流入した半面、韓国からは流出している状況が浮き彫りとなった。
G20(主要20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議で、韓国やブラジルなど新興国は円安阻止に動いた。玄旿錫・経済副総理兼企画財政部長官は、「日本の量的緩和政策が実体経済に与える影響は北朝鮮リスクよりも大きい」との認識を示し、「通貨安競争」が世界経済に悪影響を与える恐れがあると警告を発した。
政府が日本政府に対して円安をけん制しているのは、これ以上の被害が及ばないようにするためだ。しかし、共同声明は日本の量的緩和措置に対して「デフレ打開のためのものであり、円価値下落を目的としない」と日本の主張をそのまま受け入れた。企画財政部関係者は「日本の量的緩和の目的をデフレ脱却と内需回復に制限し、為替を(価格)競争力強化の目的にしないことにしたものだ」と解釈、G20が円安を容認したとの分析を否定した。
政府は、当面の円安対策として市場に直接介入することには慎重だ。玄経済副総理は今月8日、外信記者との懇談会で「外国為替市場に直接介入することは望ましくない」と述べ、「通貨安競争」には乗り出さないことを明確にしている。その上で、「輸出競争力の喪失を市場介入で解決するより、輸出競争力が落ちた企業をどう支援するか模索すること望ましい」と強調した。
政府は当面、産業界への影響などを注視し、基本的に中小企業に対する支援を強化する方向で対策を講じていく方針だ。だが円安が続けば為替介入もあり得る。