韓国で円安ウォン高が進行していることに警戒が高まっている中で、現代経済研究院が「アベノミクスが韓国経済に大きな打撃を与える」という厳しい内容の報告書を発表した。予想通りの円安になれば、韓国の輸出は6%以上減少し、観光収支で10億ドル相当悪化すると推定した。また、産業競争力で韓国の優位が脅かされると警告し、対応策を講じるよう求めている日本の安倍政権の経済政策について韓国のシンクタンクの本格的な分析は今回が初めてだ。
報告書は「アベノミクスが国内経済に及ぼす影響と示唆点―為替、経常収支、産業競争力全てが問題だ」と題し、アベノミクスの効果について、「円安で日本経済の回復に寄与する」と予測した上で、「無制限な金融緩和を行っても、2%の物価上昇・名目成長率3%達成という目標をクリアするのは困難」と分析している。アベノミクスの効果は限定的だという診断だ。
しかし、韓国経済に及ぼす影響は甚大と予想している。
「アベノミクスは短期的に韓国の輸出及び経常収支の悪化を招き、景気回復の足かせとして作用するだけでなく、中長期的にも対日産業競争力が悪化し、国内産業のグローバル市場競争力の下落を誘発すると憂慮される」として次の3つの問題点をあげた。
第1は為替レートの急激な変動。ウォンに対して円が1%下落すれば、韓国の輸出は0・92%下落する。これにより、日本政府の期待値7%まで円安が進めば、韓国の輸出は6%以上減少する。
第2に円安ウォン高で韓国を訪問する日本人観光客が減少し国内消費減少をもたらす。一方、日本を訪問する韓国人観光客増加で国内消費の流出をもたらす。その結果、観光収支と国内景気に否定的影響を及ぼす。
昨年10月以降の円安ウォン高で日本人観光客の訪韓は前年同期比を4カ月連続下回っている。逆に韓国人観光客の訪日は連続増加している。今年もこのままの状態が続けば、観光収支の損失規模が10億㌦に達すると予想される。
実際、昨年9月に30万人を超えていた日本人観光客数は12月には22万人に減少。逆に、日本を訪れる韓国人観光客数は、昨年に前年比で21%増加した。
第3は、米中やEU(欧州連合)など主力輸出市場で、韓国の機械、自動車、鉄鋼が激しい競争にさらされる。主要輸出産業別比較優位指数の分析結果、米国市場では機械、自動車、精密機器で韓国の比較劣位が深化する。IT部門は格差が縮小し、競争がし烈になる。中国市場では鉄鋼、機械、自動車部門で日本の比較優位がさらに拡大し、造船、IT、精密機器は両国間格差が縮小し競争が激化する。EU市場でも鉄鋼、機械、IT、自動車分野で付加価値比較劣位が深化し、精密機器は市場競合が加速化する。
このようなアベノミクスの影響を踏まえ、「日本の産業競争力回復に対応できる戦略を講じる必要がある」と強調するとともに、不安定な外国為替市場に常に対応する体制の構築や企業の経営条件改善を訴えた。また、環境、エネルギー、インフラなど大規模複合型産業の輸出産業化を促進するべきと主張している。
韓国経済はGDP(国内総生産)に占める輸出比率が高いため、国際市場で競合する産業分野が多い日本の為替レートの変動は即時に大きな影響を及ぼす宿命にある。ただし、韓国製品の品質が向上しており、自動車など海外生産も増えているので、為替変動の影響も以前とは違い限定的だとの分析もある。証券業界では、証券業界では「日本と競合する製品のうち、ITは韓国企業がすでに優位にあり影響は小さい」と予想している。