現代自動車が世界で初めて水素燃料電池自動車の量産体制を構築した。独自技術で開発した水素燃料電池自動車を「トゥサンix」と命名、蔚山(ウルサン)工場で「量産記念式」を開いた。今月末から量産を開始、北欧向けに試験輸出する。2015年までに1000台を輸出する計画だ。水素燃料電池自動車は1回の充填で600㌔を走行でき、次世代クリーンカーとして世界のグローバルメーカーが開発にしのぎを削る。
現代自動車は、蔚山工場内に新しい生産工法を適用した水素燃料電池自動車専用生産工場を建設し、量産準備を終えた。世界初の量産1号となったトゥサンixには、現代自動車が独自開発した100㌔㍗級燃料電池システムと2タンク水素保存システム(700気圧)が搭載された。
同社の説明によると、1回の水素充填で最大594㌔㍍走行が可能で、ガソリン車基準で1㍑=27・8㌔㍍の高燃費を実現した。また、零下20度以下での低温始動性も確保したという。
現代自動車が水素燃料電池自動車の開発に着手したのは、1998年。2000年11月に初の水素燃料電池自動車として「サンタフェ」を公開。06年にトゥサン水素燃料電池自動車を発表した。今回量産体制を整えたトゥサンixは、10年3月にジュネーブモーターショーで初めてデビューし、全世界から注目をあびた独自の第3世代モデルだ。
水素燃料電池自動車専用のラジエーターグリル、バンパー、フォグランプ、スーパービジョン・クラスター、7インチ・ナビゲーションなどを新たに開発適用して商品性を高め、水素燃料電池自動車の核心である燃料電池スタック、運転装置、インバータなど燃料電池システムのモジュール化で従来のガソリン車のエンジンサイズと同様水準のシステムを適用した。
現代自動車は、4月にデンマークのコペンハーゲン市に15台、スウェーデンのスコーネ市に2台を輸出するのを手始めにクリーンカーへの関心が高い欧州の政府機関、官公庁などを中心に売り込んでいく計画だ。
これまで、水素燃料電池自動車の課題として指摘されてきたのは、安全性と製造コスト、水素インフラなどだ。現代自動車側は、水素タンクの安全性問題について「最悪の状況を仮定して、強い衝撃テストなどで100%安全を維持できる自信がある。充電所で働く職員の安全意識を高める必要はある」としている。
製作コストは1台1億ウォンとまだ高い。現在50%以上製作コスト削減に取り組んでいるという。また、国内水素充填所は現在、龍仁(ヨンイン)、華城(ファソン)、蔚山(ウルサン)など全国に13カ所しかなく、水素燃料電池自動車の普及拡大のため政府支援が必要だとしている。現代自動車関係者は、「水素燃料電池自動車は未来の高付加価値産業であり、2018年には9000人以上の雇用創出と1兆7000億ウォン規模の生産誘発効果が期待できる」と語った。
◆水素燃料電池自動車とは 燃料電池で水素と酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーを使って、モーターを回して走る自動車。ガソリン車が、ガソリンスタンドで燃料を補給するように、燃料電池自動車は水素ステーションで燃料となる水素を補給する。CO2(二酸化炭素)など有害物質の排出がゼロ。エネルギー効率が高く、電気自動車に比べ短時間の燃料充填が可能で、 1回の充填による走行距離も長い。