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2000/12/22

<随筆>◇今年一番のできごと南北頂上会談◇

 今年を振り返ると、やはりあの劇的な南北頂上会談が忘れられない▼平壌近郊の順安空港を降り立った金大中大統領と出迎えた金正日総書記が抱き合う姿は、全世界に生中継され、感激のあまり涙を流した在日同胞も少なくなかった。分断半世紀の重い鉄の扉を開けたからだ。

 ▼年末恒例の浅草・浅草寺の羽子板市。今年、日本シリーズ対決で話題になった長島・王監督などと混じって、金大中大統領と金正日総書記の名が一つの羽子板に仲良く並んで書かれていた。この2人はもうすっかり有名人だ。「金朝韓和」(きんちょうかんわ)という4文字熟語も登場し、話題はこと欠かない。

 ▼米誌「タイム」は最近号で、「今年度アジアのニュースメーカー」に金正日総書記を選んだ。オルブライト国務長官の訪朝後、「ならず者指導者」以上の人物であることが明らかにされ、否定的なイメージもある程度払拭されたと説明した。一方の金大中大統領はノーベル平和賞を受賞、「世界の金大中」となった。

 ▼もちろん、過去のラングーン爆弾テロ事件や大韓航空機爆破事件などをあげ金正日総書記を批判する声がなくなったわけではない。また、金大中大統領にとっても、経済悪化などで早くもレームダック現象がいわれ、国政の舵取りは厳しいものがある。しかし、歴代の政治指導者がなしえなかった初の南北頂上会談を実現させた2人である。

 ▼南北関係がもう決して後戻りしないよう最善を尽くことこそがそのような批判への回答になりうるのではないか。(V)