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2000/12/15

<随筆>◇韓日中融合の響き◇

 二胡が奏でる物悲しい調べ。太鼓が打ち出す強烈なリズム。胸の奥底からパッション(熱情)がほとばしる▼このほど東京・墨田区で行われたオーケストラアジアの公演に足を運び、久しぶりに音楽を聞いて魂がふるえる体験をした。同オケは、韓国、日本、中国の民族楽器奏者60人余りで構成された「韓日中合作楽団」。韓国のピリ(笛)や伽倻琴、プク(太鼓)と日本の琴や尺八、鼓、中国の二胡や琵琶が絶妙のハーモニーを生み出す。

 ▼公演ではいずれも日本初演となる韓日中の作曲家の4作品が披露されたが、とりわけ、同オケの常任指揮者を務める朴範薫さんの作品「管絃楽と唱による恨(ハン)」(世界初演)は、アリランなどの親しみやすいメロディーがちりばめられ、特に民謡歌手、金英姙さんの朗唱は絶品だった▼日ごろ西洋音楽になじんでいる耳には、オーケストラアジアの音色は実に新鮮で、似て非なる3カ国の楽器は、まさに韓日中融合の音色を紡ぎ出す。しかも、国民性豊かで、それぞれが堂々と自己主張しているのがいい。

 ▼十数年前に朴範薫さんにインタビューしたことがあるが、「西洋音楽はテクニックが重視されるが、東洋音楽はこころで奏でるもの。民族楽器には魂が宿る」と話していたことを思い出す▼いまは西洋音楽が主流になっているが、このすばらしいオーケストラアジアの響きを世界中の人々に聞いてほしいと思う。(N)