東京の2館でロードショー公開中の韓国映画「ペパーミントキャンディー」の評判がいい。
▼「これは単純な青春愛惜の物語ではなかろう。ここには、李チャンドン監督の、自国の歴史への悲哀の思いがこめられているからである。重い感銘をもたらす秀作である」「この20年間にすべてを失った一人の韓国人の物語であり、韓国が通過した現代史の時間の意味を問いかけた力作だ」と映画評論家は高く評価している。
▼映画は、鉄橋のある河原で20年ぶりで開かれた工場の同窓会の場面から始まる。再会に興じる仲間を尻目に主人公、40歳男の金ヨンホは鉄橋によじ登り、線路に立つ。列車が迫る。「昔に帰りたい」と叫ぶヨンホの脳裏に過ぎ去った20年間の思い出が蘇ってくる。
▼主人公は元警官で80年代の民主化運動高揚期に弾圧側にあった。80年の光州事件の時は兵士だった。90年代前半のバブルのころは羽振りがよかったが事業に失敗する。初恋のスニムは死の床にあり、人生で最も美しかった瞬間を深くかみしめるのだった。
▼韓国では50万人以上を動員、昨年の釜山映画祭で観客全体から評価された映画だ。人は多かれ少なかれ過去をひきずって生きているのだが、激動の韓国現代史が重ね合わせて失った時間の大切さを気づかせてくれ、支持されたのだろう。
▼同時代を生きた日本のファンにぜひ見てほしい映画だ。(V)