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2001/08/03

<随筆>◇ある在日教授の死◇

 筑波大学の梁成吉・物理学部教授が亡くなったとの知らせを受けた。まだ47歳、肺がんだったが、余りにも早すぎる死である。

 梁教授には取材で一度お会いしたことがある。97年8月、韓国学術院賞を受賞された直後のことで筑波大学を訪れた。梁教授は東京・荒川の朝鮮人密集地で育った在日2世で、家は貧しかったが両親が苦労して大学まで行かせてくれたこと、物理学に興味を持ったきっかけなど淡々と語ってくれた。

 そして科学の初心者にもわかるよう、素粒子論を懇切ていねいに話してくれたこと、また子どものころ小児マヒを患って、少し不自由な体でお茶を入れてもらったことも強く印象に残っている。

 本紙で紹介した後、ある在日3世の女性から手紙をいただいた。「梁教授の記事を読んで、在日の一人として何か誇らしい気持ちになった。ぜひ梁教授に手紙を差し上げ激励したい」とのことだった。

 後日、梁教授が「読者の女性からの励ましの手紙がとてもうれしかった」と言ってくれたのも、忘れられない。元気なまま素粒子論の研究を続けていれば、将来はノーベル賞候補にもなったかも知れない人材だっただけに惜しい。

 梁教授は、若いころは研究に没頭する毎日だったという。そのひたむきさや研究に対する情熱は、若い世代も見習うべきだろう。合掌。(L)