世界には200を超す国と地域があるが、民族は2000以上存在するといわれている。つまり世界のどの国も、多民族が暮らしている。
日本でも北海道や沖縄を旅行すれば、アイヌ民族や琉球の文化に接することができ、文化の多様性に驚かされる。そんな世界の民族文化を、「聲(こえ)」を通して知る催し、「東京の夏・音楽祭2001―聲」が、都内で開催中だ。
なぜ「聲」なのか主催者に尋ねると、「人類が文字を持つ以前から、声は人と神、人と自然をつなぐ媒体であり、やがて祈りや歌となっていった。声からその民族独特の風土・文化が見える」との説明だった
西ロシア・スラブ教徒の葬送の歌を聞いたが、確かに文字では表現できない、声の文化の豊かさに驚かさせられた。また泣き女が登場するのを見て、そういえば韓国にもいたなと、文化の類似性も実感させられた。
さて同音楽祭に韓国から参加しているのが、伝統芸能のパンソリだ。「一人の歌い手が複数の役柄を声で演じ分け、ドラマチックな感興を創出するパンソリは、大変洗練されている」と文化人類学者の川田順造さんが評しているが、確かに世界に誇れる”声の文化”といっていいだろう。
夏の一夜、パンソリなど世界の声に親しんで、「声の歴史」に思いをはせてはいかがだろう。(L)