来月16日に決まる２００８年のオリンピック開催地と次期ＩＯＣ（国際オリンピック委員会）会長をめぐる攻防がヒートアップしている。

　大阪はかなり苦戦しており、北京とトロント、パリの三つ巴戦になっている。この開催地決定と絡んでＩＯＣ会長戦が注目され出した。つまり、現会長のサマランチ後継を唱える有力候補、ベルギーのロゲ理事に対抗するカナダのパウンド前副会長が、トロント開催への協力を条件に金雲龍理事を支援するのではないかと観測球が投げられているからだ。

　予断を許さない展開になっているが、ＩＯＣ委員長の有力候補になるほど韓国は国際スポーツ界で地位が浮上している。そういえば、一介の開発途上国から「世界の韓国」に跳躍したのは88年のソウルオリンピックが大きな契機だった。だが当時、無謀だとの批判も浴び、開催を危ぶむ声すらあった。

　80年モスクワ、84年ロスとも片方の陣営がボイコットする片肺五輪で、政治に翻弄されていた。しかし、ソウル五輪には史上最高の１６０カ国（地域）が参加、大成功を収めた。閉会式でサマランチ会長は「歴史上最も素晴らしいオリンピック」と激賛したのが思い起こされる。

　韓国は財政難で66年アジア大会を返上せざるを得なったが、世界に、満足に選手団を送れない多くの貧しい国や地域がある。いまやスポーツ大国となった韓国であるが、このことを忘れてほしくない。

　金雲龍氏に期待することでもある。（Ｚ）