韓国で公開中の映画「親旧」(チング=友達、郭ギョンテク監督)が、観客動員620万人を突破して、「シュリ」「JSA」を抜き韓国映画の動員新記録を達成した。
映画の舞台は、韓国南東部の港町・釜山。ここで育った親友の4人は、中学、高校を経て2人は大学生に、残る2人は暴力団の世界に入る。組同士の抗争が始まると2人も争いに巻き込まれ、ついに悲劇的な結末を迎える。監督の実体験をもとにした映画だそうだ。
釜山なまりの会話や、画面に登場する「チャガルチ市場」「竜頭山公園」など、釜山の名所も人気となった。釜山の人口は400万人だが、観客動員100万人に達する脅威的な勢いだ。撮影現場を観光名所にするアイデアも浮上している。
この映画がヒットした要因は何だろうか。人間関係が濃密とされる韓国でも、情報化の進む中で、それが急速に希薄化しつつあるという。「失われつつある”情”が映画の世界に生きているのを見て、世代を超えた共感が寄せられているのでは」と、韓国の知人は話した。
数年前に、旅芸人の放浪を描いた「風の丘を越えて―西便制」(林権澤監督)が大ヒットしたが、この時は「韓国が豊かさと民主主義を達成し、伝統芸能を見直すゆとりが出来たから」と分析した人がいた。
失われつつあるものへのノスタルジアは、どの社会にも強いものだ。日本でも公開予定なので、楽しみにしたい。(Q)