「日韓の共同開催で大成功裡に幕を閉じたワールドカップ大会。そしてこの世界規模のスポーツの祭典を契機に一段と仲良くなった両国はそれからもお互いの国を尊重し末永くソネソンチャッコ手に手を取って繁栄の道を歩んで行きました。めでたしめでたし。」となるかと思ったのに、なかなかうまく行かないんですよね、この両国の場合は。
前々から教科書問題・首相靖国神社参拝などの大きな日本批判の陰で見え隠れしながら時々出ていた問題では有りますが、今回はつい先日ベルリンで開かれた国連地名標準化会議(こんな会議が有るんですね)で韓国代表団が「日本海」の呼称を「東海」と変更するよう正式に求めたと云うものです。
その理由は「日本海」と云う名称は日本が支配する海という領土的意味をもつから不愉快だと云うことらしいですが、私に云わせれば「そりゃちょっと考えすぎじゃないのかナァ」と思っていたら、9月4日のサンケイ新聞の「主張」欄に「日本海」と云う名称のいわれが出ていました。以下それを拝借して書きますと「日本海」と云う名称は日本が付けたものではない。1602年にイタリア人宣教師マテオリッチの作成した世界地図に初めて「日本海」が登場して以来18世紀後半から19世紀初頭にかけてヨーロッパで作成された地図では「日本海(JAPAN SEA or SEA of JAPAN)の名称が一般化し国際的に定着した」と有りました。余り関係ないけど「日本海」の名称が世界地図に登場して丁度今年は400年目にあたる訳ですね。こっちの方がよっぽど面白い。
さて、だからと云って私は「日本海」の名称が正しいと主張しているんでは有りません。だって同じ「主張」欄にこの問題の発端は「国際水路機関」(IHO)(こんな機関も有るんですね)が来年改定予定の航海用の地図から「日本海」の名称を削除する書簡を加盟国に配布したと書いて有るのですから、これは韓国側の云い分が通ったと云うことでしょう。
先の国連地名標準化会議では流石に疲れて「両国間でアラソハセヨ(適当にやって下さい)」とさじを投げたらしいですが、私が云いたいことは、この呼称問題に象徴されるような国の体面を保つ為のみの建前論ばかりにとらわれないで双方が腹を割った話し合いをして仲良くできないものかなと云うことです。
日本側も「そうか。自国の東側に有る海は東海と称するか。それじゃ今後太平洋は我国では東海と称することにしよう」位のことを云って多少太っ腹のところを見せなきゃ尊敬されません。韓国側も愛国歌にも入っていて今更「日本海」なんて呼び方に変えることなんか絶対出来っこないんですから「東海」で通して行けば良いじゃありませんか。
今後この問題は両国間の関係機関で話し合いが持たれると思いますが、両サイドとも肩の力を抜いて和気合々と良い呼称をつけるように努力して下さい。
人間性善説で考えれば国家間のいざこざ、外交などと云うものは全て本音で話しをすれば解決できると思うんですがどうですかねェ。
(本紙2002年9月13日掲載)
たぐち・りょういち 1943年満州国生まれ。東京都立大学人文科学部卒。69年ヤクルト入社、71年韓国ヤクルト出向。94年から同社共同代表副社長代行。