11月の中旬からソウルは「もう、秋ヤメタッ」とばかりに急に冷え込み、朝の最低気温が零下を記録するなど、街を行き交う人々もすっかり冬の装いとなりました。これからまた、あのサブーイ冬が来るのかと思うといささか気分も冷え込みますが、まあ寒けりゃ寒いでまた色々と楽しみを見つけましょうよ皆さん。そうでもしなきゃこのご時世やっていけませんよ。
のっけからやけ気味の文章で恐縮でしたが、今日は寒さが厳しくなるにつれ旨味を増す冬の味覚の王様ポクヨリ(フグ料理)の日韓比較考察といきましょう。
さて韓国ではフグの事を「ポク」といいますが、これはおそらく漢字の「福」(フク・フグ・ポク)の韓国発音だと思われます。ソウルでも時節になるとメジャーなホテルの日式とか一流店に行きますと、ポクチリ・ポクサシ・カラアゲなどまったく日本風に有田焼・伊万里焼の大チョプシ(大皿)にきれいに盛り付けてくれますが、これじゃあ面白くも何ともありません。韓国では韓国風の食べ方を といっても基本的にはそんなに変らんのですが、まず韓国独特の食べ方はというと「ポクメウンタン」でしょう。
韓国では色々な魚をメウンタン(唐辛子湯)にしますが、これは代表的なものの一つでしょう。その他の食し方は先ほども書きましたが基本的には変りませんが微妙に違う所があり、「オロロッ」と驚かされることもあって中々楽しめます。
それではひとつソウルのポク刺しポクチリを喰いに行きましょうね。場所は新沙四つ角のすぐ近くの「三湖ポクチブ」と云います。玄関横の生簀にウヨウヨ泳いでいるトラフグの中から今日は4人なので最大級約2・6㌔を選んで刺身とチリと唐揚げにしてくれるように頼みましたが、ここで留意する点は刺身を大皿何枚にするかを必ず厳告する事です(訳は後で分かってきます)。
ヒレ酒は味は中々のものですが、入れ物の底上げが日本と同じで口惜しい。フグの皮の酢の物で一杯やっていると刺身大皿一枚到着、しばらくして二枚目大皿到着(4人だとこれで十分)。間に唐揚げをはさんで3枚目到着。もうチリだろうナと思っていたらナ・ナント4枚目大皿到着。さすがに「オッオイ、チリはどうなってんの」と絶叫してやっとチリ鍋をコンロにかけてもらい4枚目の刺身はフグシャブに変身。その後のチリはもちろん大骨のみ。
しかしニンニクすりおろしスープをベースにしたフグシャブと大骨チリを洋がらし三杯酢で食べた時は、日本風の淡白なフグチリを紅葉おろし三杯酢で食べた時よりもおよそ三バイ位(サブッ)美味しく感じ、やはり料理も環境(気候・風土)に合ったものが最高だとしみじみ思いました。と、いうようなことでこれからの風味、ポク料理を簡単にご紹介しましたが、ソウルの寒い夜をヒレ酒とポクチリで乗り越えて、来年はまた元気で頑張りましょう。
たぐち・りょういち 1943年満州国生まれ。東京都立大学人文科学部卒。69年ヤクルト入社、71年韓国ヤクルト出向。94年から同社共同代表副社長代行。