何たる今年の暑さだっただろうか。この暑さの中で韓国を思うと、10年も前になろうか、真夏の慶州を仕事仲間6、7人と訪れた時の事が思い浮かんで来る。
慶州の土はなぜか白いが、それが雲1つない快晴の暑い日射しに一層輝いていた。
そのまぶしさの中を、露商のアジュムマから買った片手に余るほどの大きな梨にかぶりつきながら、大陵苑(古墳公園)から雁鴨池へ私たちは歩いていた。
男どものその不細工な光景を、すれ違いの女学生達は声を挙げて笑っていた。
仕事で、観光でと、四季に関わりなく7、8回ほど訪れている慶州だが、6年前に家内と訪れた時も、一昨年に友人3人を案内したのも、夏だった。私にとっての慶州は夏に縁が深いようだ。照り輝く白い道が、今日の暑い日射しの中に浮かんでいる。
家内との慶州旅行で彼女は、夏バテ気味で食欲が無いといいながら晩飯に参鶏湯を平らげたら、翌朝はけろりと治った事を思い出す。
そう、参鶏湯といえば体力増進、気力回復の定番なのだが、ソウルの私の長年行き付けの店は、おやじさんが2年ほど前に亡くなって代が変わり、以前に比べての宣伝活動に、日本人観光客が増えたのは良しとしても、味が、サービスが変わってしまって、私の足は遠のいてしまった。
昨年の夏末、友人5人との恒例の韓国旅行の折に、その内の1人が仕事疲れのまま参加したせいで調子が出ない。
いつもなら、「それならほいそれ、あの店で参鶏湯」と来るのだが、今回はちょっとした開拓心を持って補身湯を食べに行く事にした。
昔、たまに行った武橋洞の店は、88ソウルオリンピックの影響で、どこかへ移転してしまったという。
そういえば88の頃、《犬を食べる国》と外国から卑下されるのを避けて、補身湯はメイン通りから追い出されてしまった。そして呼び名も四節湯と替え、ワールドカップサッカーの時はしっかりと《オールシーズン健康を支える食》だと自己主張して、今は立派に人々の中に溶け込んでいる。
友人たちは噂に聞く補身湯が、香りの高い菜類と和して、こんなに柔らかくやさしい旨い料理である事で、改めて韓国の食への関心を高めたのであった。
話は飛ぶが、日本の女性たちに韓流の熱気を巻き起こした『冬ソナ』が、先週終了した。夏も去るが、どうか関心を持った韓国への熱情を冷まさないで欲しいと、ひたすら願う。
やまなか・すすむ 東京生まれ。広告会社勤務時代に大韓航空、韓国観光公社を長年担当。ソウル駐在経験もある。NHKハングルテキスト他にイラストとエッセーも執筆。