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2004/08/20

<随筆>◇パリの恋人◇ 韓国双日理事 大西 憲一 氏

 SBSの国民的人気ドラマ「パリの恋人」が遂に大団円を迎えた。夢の視聴率といわれる50%を数回にわたり突破した人気メロドラマが放送される週末の夜は、繁華街にひと気がなくなると言われたくらいだ。小生も評判につられて途中から見出してから、毎週末の午後9時45分が待ち遠しかった。

 物語は、偶然パリで出会った自動車メーカー・GD自動車(スポンサーの会社名と酷似している)の若き2代目社長と、パリでアルバイトをしていた貧しくて清純な女性の純愛ストーリーだが、若社長の腹違いの弟も加わっての三角関係と、複雑な家庭事情、若社長に婚約破棄された女性の復讐などなどが視聴者のハートを捉えて離さない。

 主人公のキャラクターが実に良い。若社長に扮するパク・シニャンは、財閥2世の超エリートにて、財力に加えてシャープな頭脳と行動力を備えた「完璧な男性」だが、愛する女性の前では子供のような恥じらいも見せる「可愛い青年」で、女性から見ればまさに「理想的男性」である。「スポーツソウル」によれば、「回りの男性が頼りなくて失望している女性達の心を代理満足させてくれる」男なのである。

 ヒロインに扮するキム・ジョンウンは美人というより茶目っ気たっぷりの女性で、韓国ドラマ定番の超美人でなくて庶民的なのがいい。腹違いの弟役のイ・ドンコンは端正なマスクとニヒルな雰囲気が女性の心を揺さぶる。ドラマのホームページには、若社長派とニヒル派に分かれて熱い応援のメッセージが殺到した。誰が最後にヒロインと結ばれるか、視聴者の関心は高まる一方であった。三角関係はドラマ成功の伝統的な秘訣という。小生は金持ちエリートよりもニヒルが勝つのではと思っていたが、結末は逆であった。やっぱり金力かな? それもあるが、決め手は若社長のひたむきな情熱と行動力がヒロインのハートを捉えたのだ。

 韓国には「10回切りつけて倒れない木はない」いう諺がある。控えめな小生がもてないのは当たり前なのだ(若さも財力もないのが致命的だが)。絵に描いたようなシンデレラ物語かと思ったが、そうは問屋がおろさない。若社長に振られた女性が悪役で活躍する。いろいろあってヒロインが愛する彼のために泣く泣く身を引く場面が涙を誘う。
 
 突然、恋人に去られた若社長が込み上げる涙を堪えるシーンで視聴者はボロボロ涙を流す(不覚にもオジサンも泣いた)。主題歌「サランヘド・テルカヨ?(愛してもいいですか)」の甘く切ない調べがドラマをクライマックスに持っていく。このまま悲劇で終わるのか?いいえ、ここ韓国では視聴者が許しません。ファンの圧力で結末を変更したドラマは多いという。ハッピーエンドを要求する声がインターネット掲示板に殺到した。そして、8月15日に最終回を迎えたが、誰も予期しない大どんでん返し。「エー?マジカヨ?」視聴者の悲鳴が聞こえた。この人気ドラマはいずれ間違いなく日本でも放送されると思うので、衝撃的な結末はそれまでお預けです。


  おおにし・けんいち  福井県生まれ。83-87年日商岩井釜山出張所長、94年韓国日商岩井代表理事、2000年7月から新・韓国日商岩井理事。今年4月、韓国双日に社名変更。