日本大衆文化4次追加開放が発表された。依然として段階的開放ではあるが、今後、当地でも日本の音楽放送やドラマが楽しめそうである。その第一弾として、先日、日本の人気ロックグループ「TUBE」が韓国に上陸してきた。文化開放ではないが2月には大相撲がやってくる。
一方、日本での韓国文化は今や大ブレーク中である。映画では「シュリ」、テレビドラマでは「冬のソナタ」がブームに火をつけたようで、今年は韓国映画、ドラマの日本大進出が予想される。昨年末帰国時には大晦日恒例のNHK紅白歌合戦を見たが、女性チームのトップバッターは日本で人気絶頂のBoAであった。韓国人歌手のトップ出演に誰も違和感を抱いていないようだ。正月のバラエテイー番組で三遊亭円楽司会の人気番組「笑点」にこれまた人気沸騰しているユン・ソナが出てきたのには驚いた。「笑点」といえば言葉遊びを売り物にしている番組だけに外国人の語学力では心配であったが、彼女は持ち前の可憐さもあってか、泉ピン子他のベテランを相手にそつなくこなしていた。と同時に、韓国の文化・芸能人が日本社会に深く入り込んでいることを実感した。大いに結構なことである。
3日にソウルへ戻ったが、機内で隣り合わせになった一人旅風の女性と話が弾んだ。彼女は正月休みを利用しての初めての韓国旅行だという。はやる気持ちを抑えながら「私がご案内しましょう」と言い出す前に危険を察したのか、「主人はマイレージ利用の関係で1時間後の便に乗って、仁川空港で落ち合うの」だと。がっくり(?)。
気を取り直して、即席旅行代理店になってソウルの穴場を紹介したり、即席韓国歴史学者に早替りしてうんちくを垂れたりしていたが、「小泉首相の靖国神社参拝は大丈夫でしょうか?」と聞かれてうろたえた。大事なことを忘れていた。今年は元旦に参拝されたのだ。就任以来連続の4回目である。
ご本人は「初詣で」と言われていたが、当然ながら中国、韓国から激しい抗議が殺到した。確かに、「心ならずも国のために命を落とされた方々に哀悼の意を捧げる」という首相の気持ちは十分理解できる。実は小生の父も戦争の犠牲者として靖国に眠っている。今年80半ばの母は、毎年田舎から出てきて参拝している。問題は、責任者としてのA級戦犯者も同じ神社に祭られていることである。
これは何も隣国だけの問題ではない。心ならずも国のために命を捧げた人たちの遺族共通の思いであろう。政府が検討中という「代わりの追悼施設」建設を急ぐ事も一つの解決法ではなかろうか。心ならずも父親の顔も知らない戦争遺族の一人としての率直な気持ちである。
正月休みということもあったのか、ソウルでは予想したような激しさは見られなかった。機内で知り合った女性は、愛するご主人と初のソウル旅行を楽しまれたことと思う。でも、問題が解決したわけではない。先送りされただけだ。
おおにし・けんいち 福井県生まれ。83-87年日商岩井釜山出張所長、94年韓国日商岩井代表理事、2000年7月から新・韓国日商岩井理事。