急に冷え込んで来た11月16日、恒例の愛のキムチ作り大イベントが韓国の6大都市で一斉に行われました。これは5年前に当社の釜山支店長が釜山のヤクルトアジュマ約1000人を集めて不遇隣人助け合い運動の一環として始めた行事で、全国的に話題になり好評だったため、昨年から全国規模で行うようになったものです。
今年は約12万包の白菜キムチを作り、翌日各地方・各地区の独居老人、少年少女家長の恵まれない皆様にお届けして、せめてキムジャンキムチを味わって頂こうという試みです。正に韓国の「情」の表現の極地であり、ソウル市でもソウル市庁の前の広場を快く使用させてくれ、これは本当に官民一体の国民のための奉仕活動だと大人気となったイベントです。
寒い中2000名のソウル地区ヤクルトアジュマが制服・エプロン姿で市庁前に勢揃いして、午後1時の開始と共に一斉にキムチ作りに取りかかりました。私どもはその東大門市場のような様相のアジュマの間を各人「アジュモニ、スゴハショッソヨ」(本当はヨサニム(女史任)と呼びかけます。なんてったって我々の生活を確立して頂ける最前線の皆様ですから)と声をかけて激励するわけですが、これがなかなか難しいものなんです。「何が?」と疑問を投げかける方は来年ご招待しますから、ぜひご参加下さい。
白菜にヤンニョム(薬味・具)を入れて次々と作られていくキムチを一人のヨサニムが「チャプソボセヨ」(食べてみて下さい)と口に突っ込んでくれます。これは新鮮な白菜と吟味されたヤンニョムが調和して確かにうまい。「マシイッソ、コマッスムニダ」と2、3歩進むと「チャプソボセヨ」の声がかかる。「いま食べたんだけどナァ」と思いながらまた頂く。そしてまた人ごみをかき分けて5、6歩進むと「チャプソボセヨー」「アッ、チグムモゴッコドンヨ。いま食べましたんで」なんて弁解しても、とても通用するものではありません。
「アッ、そう私が作ったのは食べられないというわけね」「イヤイヤそういうわけではありましぇん、アッおいしそう、チャルモゴッケヨー」の繰り返しで参加者全員2000人ですよ、皆さん。腹一杯になると口の中はヒリヒリするし、いまだ続く「チャプソボセヨー」の声を後にして、しばらくテントの中で休憩していましたらまた落ち着いたので、果敢に再挑戦ということで、夕方5時までこの愛のキムチ作りは続きました。
そしてこのイベントに参加して頂いたヤクルトヨサニムたちは午前中で自分の仕事を大急ぎで片付け、まったくのボランティアで参加してもらった皆様ですが、せっせと愛のキムチ作りに取り組む、本当に韓国の女性の大らかさ、人の良さ、情の深さが感じられて心温かくなりました。
これからますます寒くなる季節、一人でも不遇な人々を温かくしてあげようと、こんなに素直な形で素直に表現できるイベントに参加できた事が喜ばしく、このイベントだけはいつまでも続けていかなければ と決心した次第でした。
たぐち・りょういち 1943年満州国生まれ。東京都立大学人文科学部卒。69年ヤクルト入社、71年韓国ヤクルト出向。94年から同社共同代表副社長代行。