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2005/06/17

<随筆>◇二日酔いの妙薬◇ 韓国双日 大西 憲一 理事

 「今朝の毎日経済新聞に出てる写真はあんた違うか?」。週末ボケが抜けきっていない月曜日の出社早々、友人からのメールに慌てて5月16日付の同紙A31ページを開けてみると、「出てる出てる、しかもデカデカと」。ちょっと老けて見えるけどなかなか渋い(?)姿は間違いなく私メです。

 一流紙の真ん中に何故? という疑問はすぐに解けた。写真の見出しは“列ができる店にはわけがある”。この店は会社近くにある「ブゴクッ」つまり「干し鱈のスープ」専門の店で、人気抜群でいつも長い列に並ばないとあり付けない。この日も昼飯時に並んでいるところを偶然に撮られただけで、特に小生が狙われたわけではない(当然)。それでも一流紙、しかも全国版に載るのはこれが最初で最後だろうから悪い気はしない。早速、得意先からも「新聞見たで」と電話がかかってきた。

 この店は、汁物天国の韓国でも「東の横綱」間違いなしの美味さで、小生のウイークリー昼飯ローテーション最初の先発投手になっている。最初というのは月曜日の登板で、昼飯時にはいつも長々とした列を作っているこの店も月曜日だけは列が短い。理由は? ブゴクッが二日酔いには最高と言われているが、当地では週末はあまり深酒しないので月曜日は二日酔いが少ない、だから店も比較的空いているという訳で月曜日が狙い目です。

 月曜の夜からは皆さん毎日深酒するので、火曜日からは超満員です。この店の人気の秘訣は新聞に詳しく出ているので受け売りは省きますが、美味さとともに「早さ」に驚く。従業員の役割が完全分業で混んでいても混乱はなく、客が席に着くや否や湯気のたった干し鱈入りスープが10秒以内に出てくる。おかずのキムチ類はテーブルの容器に備え付け。通常10分もあれば食べ終わる。次の客が待っているので長居はできない。従って回転が早い。価格は5000ウォン(500円)と手頃だが、多いときは1日1000人分を超える時もあるという。単一メニューで1日500万ウオンとは…。

 二日酔いと言えばソンジ(牛の血の塊)が入った「ヘジャンクッ」が通り相場だが、実は「ブゴクッ」も広い意味で「ヘジャンクッ」の一種になる。「ヘジャンクッ」は漢字では一般的に「解腸クッ」と理解されているが(私もそう思っていた。因みに「クッ」は汁物の意味で漢字はない)、当社のインターネット検索プロによれば、「解酲」と書くのが正しいのだと。酲には「宿酔」とか「酒毒」という意味があるが、これだと「ヘジョンクッ」と発音するが、それがいつしか「ヘジャンクッ」と呼ばれるようになった由。

 ところで以前、市内のとあるレストランの入り口に「カイチョウスープ」という日本語のメニューを見かけた。一瞬、会長専用のスープ?と首をかしげたが、写真の料理を見て納得した。解腸がカイチョウになったのだ。


  おおにし・けんいち 福井県生まれ。83―87年日商岩井釜山出張所長、94年韓国日商岩井代表理事、2000年7月から新・韓国日商岩井理事。昨年4月、韓国双日に社名変更。