親愛なるＰ兄に。この間、碁席で久しぶりにお会いしましたね。「歳月は人を待たず、訪れるのは白髪だけだ」とはよく言ったもので、私たちはいつの間にか、高齢者の部類に入ってしまいました。でも、あなたは相変わらず意気軒昂で、世の中の動きをいろいろと鋭く観察していることに感心しました。

　案の定２人の話題は「冬のソナタ」に始まる韓流ブームのことや、独島（竹島）のことにまで及んだ。あなたは自分の意見を捲し立て、私はもっぱら聞き役でしたが。

　さて、いまの韓流ブームは韓日両国の歴史においても空前の社会的現象で、これまでは想像もできなかったことです。この人気の秘密がどこにあるかについては誰しも関心があるところです。いうまでもなくヨン様ブームの特徴は、日本の中年女性が韓国の男性俳優に熱を上げて追いかけるというパターンで、そこにはどちらかというと、甘いムードと軽薄さのようなものが同居している。

　Ｐ兄よあなたは、いみじくも韓流ブームがもっている摩訶不思議な側面をも指摘しましたね。実はその多くに私も同感でした。しかし、そのうちにあなたはバブル景気が、あっという間に巨大な傷口を残して過ぎ去ったように、韓流ブームも近い将来終わる公算が強いと言い出したのには、正直いって苦笑いさせられました。

　なるほど、流行はそのうちに必ず終わる運命をたどります。しかし、今回のブームで利益を受けているのは韓国側の方がはるかに優るし、日本の中年女性が同じ日本の男性よりもペ・ヨンジュンに新鮮な魅力を感じたとて、それは結構なことで、何もそうむきになることはないでしょう。私はむしろこのブームを千載一遇のチャンスとして捉え、両国の間の友好と交流がさらに発展し、永続することを期待するのだが。

　Ｐ兄よ、あなたは独島（竹島）の問題についてもかなり強硬な民族主義の立場に立っているようでしたね。私はどちらかというと在日が長いせいか、名分や体面よりも実学的に物を考える癖が付いてしまいました。

　私とて、独島が韓国固有の領土であるのは間違いないと考えます。そもそも１００年前、韓国を強圧的に植民地にする過程で行われた竹島の領有宣言を正当化することは到底許されるものではない。また、歴史的にも日本側の挙げる古文書類が荒唐無稽な内容が多いのに対して「朝鮮王朝実録」や地理誌といった文献の記述の方が重みがあって信用できます。

　ところで今回、「竹島の日」という条例を制定した島根県議会の行動は全く無分別なものでした。だが、韓国側もその挑発に乗って、いささか過剰に反応した嫌いがある。世論の怒りはともかく、すぐに親善交流を止めるとか、日の丸を焼くといった過激な行動は疑問です。じっくりと相手の真意を見極めて冷静に対処しても決して遅くないからです。

　最後に兄の健康を祈って、アンニョヒ。

　　チェ・ソギ　　在日朝鮮人運動史研究会会員。慶尚南道出身。最近の著書に『在日の原風景－歴史・文化・人』(明石書店刊）などがある。