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2005/08/26

<随筆>◇"韓国ツウ"を目指して◇ ZOO・PLANNING 尹陽子社長

 この夏は時間があれば韓国映画を観て、そして韓国文化に関する本を買い漁っては読んでいた。遅い韓流デビューかって?いえ、いえ仕事のために…。実は妹(通訳、翻訳の尹春江です。)の著作第二弾を今準備中で、韓国に関する生半可な知識を、せめて『韓国ツウの日本人』レベルまでもっていこうとする涙ぐましい(?)編集努力なのである。

 以前、なぜ通称名(田中陽子)で仕事をするのか聞かれて、書籍編集とか、その他の仕事でも「尹陽子さんは韓国人だから、韓国のことをよく知っていると思われると困る」と答えたことがあった。おかげさまで韓国関係の仕事は皆無だった、最近まで。今は韓流ブームであるので妹に関することなら引き受ける。血は水より濃いから。

 第一弾「韓国ドラマ・映画ナビ」(大和書房刊)は姉が編集して、妹が著者。韓流ドラマや映画ファンに向けて、映画とドラマのナビゲーターが痒いところに手が届くような懇切丁寧に内容を語るガイド本である。発売後4カ月が過ぎたが、コンスタントに売れ続けているという。無類の本好きだった父が生きていれば、全国の書店を手弁当ぶら下げて営業してくれたかもしれない。

 そして妹の本の第2弾は私が10月に設立する出版社から本を出す。そうです、とうとう私は出版社を作ることを決意して、今準備に奔走中。たぶん、在日の女性では第一号かもしれない…。準備を進める上で出版関連団体の名簿を見たり、東京ブックフェア出展者パーティで観察したが、出版界はおじさん天国である。出版不況、致し方なし。

 反面、こんな丁か半かみたいな仕事、女性は敬遠するんだなぁというのも正直なところ。では、なぜ今創業?と、聞かれれば平成3年に独立して以来、書店に並べるために作った本は50冊以上,20社を超える出版社と仕事をして、増刷のお知らせや印税が振り込まれるたびに「あ、A社はこの本で利益が1億円になった」「B社はこの8刷目で5000万の利益が2年間で出たんだ」とわかってくる。すべての本が利益を生むわけではないが、打率は悪くないはず。なのに、年々、厳しくなる編集予算と各出版社のわけのわからない方針に翻弄されて、「うまい、安い、早い」みたいな企画しか通らなくなりつつあるのがまた悪循環の元凶だ。

 商品(本)を作るのは全く変わらない作業だけど、初期投資をするかしないか(いや、もっと複雑だが分かりやすくいうと)、流通のインフラがどこまで整えられるかが勝負どころとなる。ならやってみようじゃないかと思ったわけだ。今後は中国との版権ビジネスも考えている。そのために社名は漢字でいく予定だ。

 出版に興味のある法人は協力社になってもらいたい。出版は文化だ!とフンゾリー二を決め込んでいたおじさんたちにはできなかった、敷居の高くない出版社を目指している。もちろん編集者も書店営業もこれから募集する。

 妹には韓流ブームが終わっても、印税長者になってもらおうと考えている。というわけで、トリビアの夏。本を読むたびに韓流文化のささいなことに「へ~」が尽きない。


  ユン・ヤンジャ 1958年、神奈川県生まれ。在日3世。和光大学経済学部卒。女性誌記者を経て、91年に広告・出版の企画会社「ZOO・PLANNING」設立。