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2005/03/25

<随筆>◇合理的な出会い◇ ZOO・PLANNING 尹陽子社長

 先日、恒例の春のソウル旅行をしたときのこと。メンバーは私と妹の中年仲良し姉妹、わが社のスタッフY(29歳)、フリーのライターNさん(33歳)の女性4人だった。土曜日に到着して、ちょうど今が旬のカンジャンケジャンの夕食を摂りながら、その夜の予定について話し合った。ソウルではいつも食材の買出しと、食事の楽しみに翻弄され、夜遊びなんてしたことがない。というよりできなかった。夜、おなかがあまりにもいっぱいになりすぎて。

 しかし、今回は違った。自他共に認める狩猟民族であるライターNさんのたっての希望で、韓国男性と知り合えるナイトスポットに繰り出すのがミッションである。仕事では『明日できることは今日しない』私であるが、このときは、土曜の今晩がチャンスではないか?と、意見を述べ、満場一致の運びとなった。さっそく現地の「夜の案内人」のような男友達に電話をする妹、連携プレーも完璧な尹姉妹である。

 こうして「ソゲッティング」(ソゲ=紹介する、と英語のゲットをあわせた韓国式造語)の夜の幕開けとなった。教わった場所は江南地区の、とあるホテルの裏手、店の前では長身の守衛がお客のチェックをしている。男性は30歳以下入場禁止なのだ。(女性の年齢制限はなし、セーフ!)システムを聞き、案内されて店内へ。広くてゴージャス、ステージではバンドの女性ボーカルが歌い踊っている。一番の驚きはお客の人数より多い黒服のボーイさんたちが忙しそうに店内の女性を連れて、男性の席を駆け回っていること。

 そう、ここではボーイさんが男性客のために、代理ナンパをしてくれる。気に入った女性と一緒に話したり、踊ったり、カラオケ(個室)したりできるのだ。もちろん女性にも選択権があって、気に入らなければ同席を断ることもできる。店内は4、5人の女性グループが多い。女性はステージ前の中央部ソファに案内される。一方、男性の席は壁際のラウンド型のソファ、女性たちの品定めがしやすいためだと推測できる。全くかゆいところに手が届く配慮である。

 以前、ある男性が「女性に声をかけて断わられると、全人格を否定されたような気がして落ち込む」と言っていたのを思い出す。ここではそんな心配はどこ吹く風、ボーイさんにチップをはずめば優先的に、ベルトコンベアのように女性が現れる仕組み。事実、私たちの席の尹姉妹以外の二人にお呼びがかかること、ゆっくり飲んでる暇もないくらい忙しい。若いし、日本人ということで人気者だった。でも、こんなにせわしないのは、男性が選ぶシステムが災いしているんじゃないかと思う。女性が選べば、男性も嬉しいし、ゆっくり会話もできるはず。でも、もし女性に選ばれなかったら男の沽券に関わる? それとも男性に選ばれてこそ、女性の価値は上がる? う~ん、なにか納得がいかない…。男尊女卑でもあるまいが、もっとフランクにお互い選べたほうがいい。

 それはともかく狩猟民族Nさんは大きな獲物をしとめて、いま遠距離恋愛中である。


  ユン・ヤンジャ  1958年、神奈川県生まれ。在日3世。和光大学経済学部卒。女性誌記者を経て、91年に広告・出版の企画会社「ZOO・PLANNING」設立。