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2006/04/07

<随筆>◇日韓対人温度差思考◇ ZOO・PLANNING 尹 陽子 社長

 先月、娘の高校卒業と姪の小学校卒業を祝って、韓国に家族旅行をしたときのこと。今回は趣を変えて、韓国の大学を見学しようということになり、慶熙大学を訪ねた。ここは韓国でいちばんの韓方医学部がある。広大なキャンパスは、立派な建物が多い上にあちこち工事中で、なんとなく韓国の教育熱の高さを感じる雰囲気である。

 新しく建ったばかりの留学生も入れる寮は、目にまぶしいような大理石の堂々とした建物だった。女子寮の中を見せてもらって、娘にここで勉強したら…と水を向けてみたり、自分が留学生になってここで住んだらどんなに楽しいだろうかと考えたりした。

 学校の周りを散策すると、電信柱や民家の塀に、下宿生募集の張り紙がいたるところに貼ってある。「親切なおばちゃんがいる暖かい雰囲気の下宿」「きれいな部屋で面倒見のいい下宿」など、手書きのコピーで、いろんなコメントが書いてある。今の日本人の若者なら逃げ出したくなるような、世話好きのおばちゃんの姿が浮かんできて、韓国人と日本人の対人温度差について考えてしまった。

 私たち在日の共通認識として「韓国人は暑苦しい」と自虐の意味をこめた共通認識のようなものがある。自分もそうだし、家族や友人も。いい意味も悪い意味も含めて、ついでに愛もこめて「暑苦しい」と…。普段、日本人の中で生活しているからもっと感じることかもしれない。

 韓国に行って道を尋ねると、手を引っ張って連れて行ってくれるおばちゃんに面食らいながらも、しみじみ韓国人らしさを感じるのは私だけだろうか?以前、まだ10歳ぐらいだった娘を連れて市場を歩いているとき、店先に腰掛けていたおじさんが、「かわいい」といって娘のほっぺたをギューッとつねったことがあった。

 娘は「すごーく痛かった」と驚いて目を丸くしていたが、私はそれが韓国人の親愛の表し方だと説明したことを覚えている。私のような在日は、そんな韓国人らしいしぐさに触れると、郷愁のようなものを感じる。昔、一世のおばあちゃんにかわいがられた記憶がよみがえる。

 対して、韓国びいきの日本人は「韓国人は人情があって親切だ」という(でも、韓国に住んでいる日本人の言い方は微妙に異なるが…)。韓国に旅行したとき、そこここで親切にされたことを話す人も多い。

 以前、私の事務所近くの韓国料理屋で来日して7年たつという飲食店経営の30代の韓国人女性と偶然隣り合わせて話したことがある。彼女は「韓国ではもう暮らせない。あまりにも人の世話を焼きすぎる韓国より、冷たいぐらいほっといてくれる日本が好きだ」という。私は目からうろこが5枚くらい落ちた気がした。

 人間は千差万別、親切とか暑苦しいのが嫌いな韓国人がいても当たり前なのだ。時代が変わっても国民性は急激に変わらないのかもしれないが、人間が好きなところに住める世の中はいい。


  ユン・ヤンジャ 1958年、神奈川県生まれ。在日3世。和光大学経済学部卒。女性誌記者を経て、91年に広告・出版の企画会社「ZOO・PLANNING」設立。