今日は皆さんと一緒にサラリーマン(特に晩年サラリーマン)の最大のキップム(喜び)であるお昼ご飯を食べに行きましょう。韓国での昼食は日本と違ってバラエティに富んでおり量も申し分なく、価格も安く、よいことづくめ。とくにわが社の周辺は何でか分かりませんが若い人が多く、昼食時にはどっから出てくるのか、ゾロゾロとチョルムニドゥル(若い人たち)が出現します。
まず初日は、会社の一番近いところでチョングックチャン(納豆テンジャン)と大玉子焼き。ここの大目玉焼きが壮観で頼むと「マリハナーッ!」と女の娘が大声を上げるので、来韓8カ月目のM氏は「なっ、なぬっ?マリハナッ?」と最初はひっくり返りましたが、これは正確に云うと「ケイラン・マリ、ハナーッ!」(卵巻1個)なのです。玉子8個分を一度に使用するというから2人では食べきれません。
2日目はもう少し坂を下ったところで「オジオポックンパプ、カルククス、マンドゥ」(イカの辛々し味噌炒めご飯、手打ちうどん、肉まん)この三点セットをM氏と二人でナノモクスムニダ(分け合って食べます)。
ちょっとM氏のことに触れておきますと、13年いた前任者と交代で去年6月に韓国に赴任したばかりの人ですが、私も最初は食事が合うかどうか心配していたのですが、キムチ、唐辛子味噌、マヌル(にんにく)なんでもいらっしゃいのつわ者で「韓国食は奥が深い」などとのたまわっています。この点は私と息もピッタリなのです。
さて3日目は少しタンペク(淡白)にということで韓国サラリーマンの偉いさんは絶対に行かないとこ、「K家」です。ここでの私はマンドゥラーミョンとキムパプ(韓国風太巻き)もしくはキムパプの代わりにユブチョパプ(おいなりさん)、くだんのM氏は必ず素うどんとキムパプ。
ここではまず40歳以上の人は見たことがない。チョルムニ(若い人、それも女性が多い)ばっかり。「ナンデカナァ?」と考えたら、まずはその価格構成。2人で1万5000ウォンを超すことは絶対にない。韓国のエライさんは体面を考えて絶対にこのような店には入らない。私どもは周りの若い人達が「あの日本人らしきおじいさん達とってもプルサンハネヨ(可哀想ね)。きっとお金があまりないのね。あっても老後の貯蓄に回すのね」と言っているような気がしますが、そうじゃないんだってばー、本当にうまいと思って来てるんだってばー。
そして和食が恋しい時はトンカツと小うどん、二日酔いの時はアッサリ風味カルビ湯、とかように恵まれた(?)昼食生活をおくっています。「奥の深さ」はともかく、体に良くて美味しいことは間違いありません。皆さんも一度新沙洞サゴリ(四つ角)昼食街を深訪してみてくださいね。
たぐち・りょういち 1943年満州国生まれ。東京都立大学人文科学部卒。69年ヤクルト入社、71年韓国ヤクルト出向。94年から同社共同代表副社長代行。