韓国に行くたびに、新しいマンション団地(向こうではアパートと呼ぶ)が急速に増えているのに驚いている。とくに、ソウルをはじめ大都市の周辺ではどこに行っても、あたかも「方解石」のように、にょきにょきと林立している光景は何とも壮観だ。
かつて韓国にマンションが珍しかった頃は、これも国家の経済発展の証しの一つぐらいに思えたものだが、今では全国到るところマンションだらけだ。例えば、山の中腹や田んぼの中、海浜のような辺鄙なところにまで建っている。どうやら韓国人のマンション熱は少々異常だといえなくもない。私は何も、近代的で、便利な集合住宅であるマンションに敵意を抱いているのではなく、自然の環境や景観を結果的に破壊することを心配して言っているのである
行政当局は最近、住宅難対策の一つとして、松坡地区と盆唐地区に新たにミニ都市を建設する方針を打ち出したというから、当分はマンション造成ラッシュが続きそうだ。
マンションの建設といえども経済活動の一環である以上、需要と供給のバランスの上に成り立つものであるし、また、基本的に狭い土地の効果的な利用、住宅の不足という大義名分が根底にある。したがって財閥系建設業者が、それに乗っかって莫大な利益を得ようが、一部の人が不動産投機の温床にしようが、在日の私がこれに文句をつける立場にはない。
私の知っているその高層マンション団地は、17階建て(各階、二世帯入居)の、縦に長いマンションで、こうした独立棟が連結して一つのブロックを形成、そのブロックの集合体が団地なのである。
ところで、大量生産工法によるマンションの建設現場を覗いたことがあるが、そこには重厚な建物を作っているという雰囲気はなく、杞憂とは思うが、建物の強度を規定する鉄骨の量が少なく、大部分を鉄筋でまかなっているような印象を受けた。韓国に幾ら地震が少ないからといっても、これで本当に大丈夫だろうか?そんなことを思っていると突然、一九九四年、ソウルの三豊百貨店が白昼崩壊して(手抜き工事が原因)、1400余名もの死傷者を出した大惨事のことが、頭を寄切った。
聞くところによると、昨今の経済的不況のせいか、マンションが売れなくなるという異変があり、それにともなって価格の急落もあって、関係者はとても困っているという話だ。
最後に余談を一つ。歳月の経過と、その他もろもろの要因によって、こうした高層マンション団地が、いつの日か突然、ゴーストタウン化しないとは断言できない。今のところ怪奇小説的な妄想の域を出ないが、廃墟と化したゴーストタウンを想像するだけでも空恐ろしい。
チェ・ソギ 作家。在日朝鮮人運動史研究会会員。慶尚南道出身。最近の著書に『韓国歴史紀行』(影書房)などがある。