韓国での今年の冬の釣りは、すっかりしょぼくれてしまった。まず大統領選の直後、満を持して出かけた12月中旬の最後の「ヨルモゴ(英語では満州鱒)」釣りが、まったく成果なかったことだ。年の瀬の最後の渓流釣行として、冬場でも凍結が遅い慶尚北道・奉化のポイント、洛東江最上流で五十㌢級が出たとの情報を聞いて出かけた。しかしひどい寒風に悩まされたうえ、大物にもあたらなかった。
次に、年初に楽しみにしていた江原道・華川の「ヤマメ祭り」で、ルアーマンたちに人気だった「ヤマメ釣り」が、環境原理主義者(?)の“妨害”で中止されたことだ。「ヤマメ祭り」は地元が町おこしでやっている大規模な氷祭り・雪祭り。今や全国から観光客がつめかける。その祭りの一つに、凍結した川をせき止め、凍らないように釣堀にし、そこにヤマメを放流してルアーで釣らせるイベントがあった。釣ったヤマメは会場で刺身や焼き魚にして食わせもする。ところが今年、一部の環境保護運動家たちが「養殖ヤマメを放流すると残存したのが自然化して生態系を壊す」と文句をつけ、中止になったのだ。
環境が気になるのなら、ヤマメが流出しないようネットを張ってやればいいのに。これで「冬のヤマメ釣り」もなくなった。後は貯水池の管理釣り場に「ニジマス釣り」に行くしかない。
ところが「マス釣り」も今年はどこも食いがよくない。どうやら放流数が少ないようなのだ。聞くと養殖マスが品薄で値段が上がり、放流量を減らさざるをえないという。これじゃ釣り客にとっては面白くない。しかし今年は江原道の珍富と平昌で養殖マスを川に放流し、釣らせたり食わせたりの「マス祭り」をやっていると耳にした。華川の「ヤマメ祭り」に刺激されてのことらしい。
早速、出かけてみると、雪と氷の河川敷を利用し、テントを張ってイベント会場にしている。とくに珍富では地元の奥さんたちがかいがいしく郷土料理などを作っている。お気に入りの「カムジャジョン(ジャガイモのお好み焼き?)」など実にうまかった。ところが平昌がいけない。マス釣りの客から1人2万ウオンをふんだくりながら、インベント性のサービスやパフォーマンスがまったくない。施設もゼロに等しかった。
平昌は冬季五輪誘致に二回も立候補した「ピョンチャン」ではなかったか。川岸を利用した子供だましみたいな小さなスケート場と土手のソリ場があったが、冬季オリンピックを連想させるものは何もない。
町には温かいコーヒーを飲ませるしゃれた喫茶店もない。単なる韓国のわびしい(?)田舎町なのだ。国際的で大々的だった五輪誘致キャンペーンの「ピョンチャン」はどこにいったのだ。あのイメージの乖離(かいり)は実に不思議だった。
くろだ・かつひろ 1941年大阪生まれ。京都大学経済学部卒。共同通信記者を経て、現在、産経新聞ソウル支局長。