VIPイルボンサラムというモイム(集まり)に時々、顔を出していたが、幹事の朴牧師から「貴方は韓国生活が長いのだから、何かためになることを喋って欲しい」と言われてうろたえた。毎日、反模範的生活を送ってきた男が、一夜漬けで格好つけて喋ってもぼろが出るのは目に見えているので固く辞退したが、「失敗談はかえって反面教師になります。それに今度は女子学生もたくさん参加しますよ」殺し文句で簡単に篭絡された。
ところでVIPイルボンサラムは、いわゆるVIPの集まりではなくて、聖書にある「You are Very Important Person in My(God’s) eyes(神の前では皆さん一人一人が大事な人)」から来ているらしい。元外換銀行役員で詩人の権会長が主催する「VIP KORPAN」も楽しいモイムだが、どちらもクリスチャンにこだわらず日韓のビジネス関係者にも広く門戸を開いている。ちなみに私は困った時だけ一時的熱烈信者になって神様、仏様におすがりするという不埒者です。
悩んだ末に選んだテーマは、「円滑な人間関係のための10カ条」。これは私が長い商社生活でもっとも苦労してきたテーマで、仕事だけでなく友人、家族、恋人など全ての人間関係に共通する。ここで10カ条を全て説明する時間はないが、一番大事なことは「相手に関心を持つ」ことです。こちらが関心を持てば相手も関心を持つ(そうでない時もあるが)。そのための一つの手段として、「ほめ言葉のシャワー」というゲームをやってみた。
実は今年始めに日本に帰省した時に、高校時代は夢見る文学少女だった道正さんから「ほめ言葉のシャワー」という小冊子を貰った。ページ゙をめくると「あなたが言ってもらいたいほめ言葉は何ですか? その言葉を相手にも贈りましょう」そして小冊子は「ほめ言葉」で溢れていた。「笑顔が素敵だね」「出逢えてよかった」。嬉しくなる言葉が続く。
会場の皆さんに小さなメモ紙を渡し、ほめ言葉を書いてもらった。中小企業の社長さんも可愛い女子学生も緊張した顔で書いている。それを半分に折って箱の中に入れてもらって回収し、よくかき混ぜてから一人ずつ順番に取り出して大きな声で読んでもらった。誰のものかは分からないけど、この場にいる誰かが言って欲しいほめ言葉。
「お年より若く見えますね」(あの社長さんだな。私も言ってほしいな)
「最近、スマートになったね」(女性の願いは誰も同じようです)
「去年よりズーッと綺麗になったね」(歌の文句みたいだな)
「輝いているね」(最近、生え際がかなり後退してきた私には言われたくない言葉)
最初は少し固かった会場の雰囲気が、みんなの発表で一気に和んできた。「意外とやりますね!」終わるや否や、朴牧師が早速、ほめ言葉を実践してきた。
おおにし・けんいち 福井県生まれ。83-87年日商岩井釜山出張所長、94年韓国日商岩井代表理事、2000年7月から新・韓国日商岩井理事。04年4月、韓国双日に社名変更。