今年の5月に、当社は議政府の先にある東豆川のダイナスティカントリークラブ(18ホール)を現代グループから買受けて、念願の自社ゴルフ場を持つことができました。ソウルから車で約1時間半と少し遠いのが難点ですが、これも既に始まっている高速道路の工事が3年後には完成し、1時間で行けるようになり収益の面でも期待できそうです。
このゴルフ場は登山コースでも有名な逍遥山(ソヨサン)という優雅な山の連なりにあるので、実に山奥と云う感じがして、ゴルフそのものも周囲の景観を眺めながら十分楽しめます。
さて、去る9月7日、このゴルフ場で「メッテジ、ハンマリ(1匹)、チャバッスニケ(捕らえたので)チャプソボセヨ!(ご賞味ください)」と云って、全長1・2㍍、体重20㌔位の猪が送られて来ました。今夕7時から「メッテジ半狂乱試食会」を催すので集合とのこと。ナンデ「半狂乱」がつくのかは終わりのほうで明らかになりますので今は無視してくださいね。
「オディソヨー?(何処でー)」と云う質問に、総務理事はいともたやすく「会社の前にいつも行くサムギョプサル(豚焼肉)の店があるでしょう。あそこに集合ですよ」とのたもうたものでした。チョッ、チョッと待ってください。一応ここは韓国の首都ソウルで、しかも新興ビジネス街の江南地区、その中心に近い新沙洞なんですが、そこでいとも簡単に「今日、山で猪が1匹取れたけん焼き殺してみんなで喰らうベェー」みたいなことが出来るのかどうか?
東京で考えますと「丸の内」とまではいきませんが、「新橋のビジネス街」あたりの会社に栃木近辺のゴルフ場から猪1匹ポーンと送られて来て、近所の居酒屋かなんかで調理してもらって皆で牡丹鍋でもつつこうか・・・、なんて絶対プルカヌン(不可能)です。保健所関係かなんかに届けなくても良いのかナァなんて考えていたら、もうナーンも関係ないんですね。
午後7時に10人位集まったら、もう焼くばかりに調理された黒っぽい猪肉がデーンと目の前に山盛りになっていました。イゴシャマルロ(これこそ)日本と韓国の大きな大きな、習慣と云うか、思考方式というか、行動様式の絶対的な違いですね。久しぶりに痛感して豪快な気持ちになりました。大らかですよね、やることが。多少けだもの臭くても気にしない。たまに猪の皮や毛が混じっていてもポイと捨てて、またカブリつく。
私も周囲の勢いに乗せられてパクパクかぶりつき、グイグイとチャミスル(韓国焼酎)がすすむ。そして行き着いたところが焼酎漬けになってしまったメッテジの肉が、私の体の中で半狂乱になって暴れ回り、それが私の姿を借りて表に出るものだから、傍から見れば「田口、半狂乱」というザマになったと云う恥ずかしい初秋のお話。
1943年満州国生まれ。東京都立大学人文科学部卒。69年ヤクルト入社、71年韓国ヤクルト出向。94年から同社共同代表副社長代行。