NHK教育テレビに「人間講座」という番組がある。文学や歴史、社会問題、スポーツなどさまざまなジャンルの話題を専門家が深く掘り下げて解説する教養番組で、なかなかおもしろい。
4月と5月は「朝鮮通信使」がテーマで、講師は仲尾宏・京都造形芸術大学教授である。「朝鮮通信使」は何度も取り上げられてきたが、2カ月の長期講座として大々的にスポットが当てられるのは珍しく、江戸時代の韓日交流を振り返る絶好の機会となろう。
一般的に朝鮮と徳川幕府との間の交流と考えられている通信使だが、番組ではすでに高麗王朝と足利幕府の間で外交使節の派遣が行われていた史実なども紹介しており、非常に興味深い。また朝鮮が足利義満治世下で日本と正式外交を樹立し、関係を強化していたこと、また対馬宗家や西国大名に朝鮮の官職を与え、交易などの特権を与えていたことなどを歴史的資料をもとに裏付けている。
その後、日本は戦国時代に入り、中央集権体制が崩れ、地方の豪族が勢力を蓄える。驚くべきことには、幕府よりも朝鮮に親近感をいだき、「臣下」のようなかたちをとっていた有力大名がたくさんいたことである。秀吉の朝鮮侵略という不幸な出来事のあとで、家康が速やかに関係を修復できたのは、こういった交流の積み重ねがあったからであろう。
朝鮮通信使は、計12回におよび、二百数十年間にわたる善隣友好の関係が続いた。韓日関係史のなかで、これほど長期にわたる交流はない。
いま韓日関係は、歴史教科書問題で波風が立っているが、こういう時こそ、朝鮮通信使の原点に返ることが必要ではないのか。放送は毎週水曜日午後11時から11時半。(N)