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2009/04/17

<随筆>◇桜の原産地は?◇ 韓国双日 大西 憲一 理事

 春真っ盛りです。つい先日、お待ちかねのケナリ(レンギョウ)がようやく黄色い花を見せて、まだ寒いけど今年も春が来たなーと思ったら、純白のモンニョン(木蓮。こちらでは白くても白蓮とは言わない)が続き、今はポッコッ(桜)が満開。その横では淡紫と白のライラックが甘い香りを漂わせている。チンダルレ(ツツジ)の蕾も膨らんで来た。新芽をつけたウネン(銀杏)の枝が風に揺れている。韓国の春は一気にやって来るのです。

 陽気に誘われて、ソウルではナンバーワンの桜の名所、ヨイド(汝矣島)の夜桜見学に駆けつけた。ヨイドの桜は国会議事堂近くの漢江沿いの堤防にびっしりと植わっており、今が満開だった。ちょうど「桜祭り」の最中で一部の道路は歩行者天国になっており、家族連れや若いカップルで押すな押すなの超満員。見事な桜をバックに写真を撮ったり屋台の食べ物を頬張ったり、思い思いに楽しんでいた。

 韓国の花見は日本のように桜の下で宴会といった風景はあまり見られず、というよりそんなスペースもないので桜の下をそぞろ歩きするだけで、花より団子の日本人にはちょっと物足りない。従って、花見にはつき物の酔っ払いもいなくて至って健康的である。私も夜桜お七のように素早い動きで人並みをかき分けて、ひたすら花見散歩を楽しんだ。

 ところでマスコミの報道によれば、この桜が韓国内でちょっとした論議を呼んでいるという。ある新聞によれば、「桜は日帝時代の象徴なのに、よりによって国会議事堂の近くで桜祭りまで開くとは一体何事か」という一部識者の意見が出ている。記事をよく読んでみると、ヨイドの桜は1960年代に在日韓国人から寄贈されたものを、米国のワシントン・ポートマックのようにヨイドの堤に植えられたが、国会議事堂の傍というのが問題なのだ。

 別の識者意見としては、「桜は何も日本固有のものではなく、また、国民がこんなに楽しんでいるのだから何も目くじらを立てる必要もなかろう」というもので、解説によると、韓国随一と言われている鎮海市の桜は日帝時代終了とともに清算作業の一環として切り倒されかかったが、日本原産と思われていたワン・ボンナム(ソメイヨシノ)が実は済州島が原産地ということが60年代初めに証明されたので、桜をそのまま生かして今のような名所に仕立て上げたとの事。

 桜がかような政治的論争の対象になっていたとは知らなかった。しかも原産地論争となると小生はお手上げだが、いずれにしても桜に罪はない。

 当社の若手韓国人スタッフに聞いてみたら「花に国境はないでしょう」。私もそう思います。


  おおにし・けんいち 福井県生まれ。83-87年日商岩井釜山出張所長、94年韓国日商岩井代表理事、2000年7月から新・韓国日商岩井理事。04年4月、韓国双日に社名変更。