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2009/08/28

<随筆>◇アンチエイジング◇ ZOO・PLANNING 尹 陽子 社長

 世の中に老人が増えたせいだけではないだろうが、「アンチエイジング」という言葉は耳慣れたものになった。いや、耳にタコか? 

 特にマスコミではアンチエイジングは、美容や健康を取り上げるときのキーワードにさえなっている。いつまでも若く、健康でいたいと願わない人はいない。2000年前から脈々と伝わる道教の教えの根幹になっているのは、神仙になって生きながらえる不老長生なのである。道教の中の導引術は、他人から若さのエッセンスを吸い取る方法まで、まじめに語り継がれていて、そのエゴな思想に呆れるばかりである。人間の欲望はみごとに普遍であるのだと感動すら覚えるのも、私が歳をとったせいなのかもしれない。

 先日、日本抗加齢医学会のエデュケーショナルセミナーに参加した。日本の医学会のアンチエイジング分野で有名な先生方の話は興味深かったが、特に「見た目のアンチエイジング」の講演をされた形成外科の権威であるS先生のお話は、思わず膝をたたきたくなるような説得力があった。形成で見た目を変えて若返る医術をお持ちのS先生はどんなびっくり!を用意されているのだろう?「最新の見た目のアンチエイジング」って?集まった人はそんな期待を抱いていたはずだ。

 演台の横の大画面に映し出されているのは、高齢の男性がゴルフをしている様子である。「この人は100歳を超えても元気にゴルフを楽しんでいる僕の父です」と70歳くらいのS先生が話され、会場は小さくどよめく。「身近に父を見ていて、アンチエイジングの基本の9割は、食べ物と適度な運動で決まるというのが、僕の持論です」。その後、見た目の年齢と実年齢のスライドが映されたりしたが、私は冒頭の先生のお話にグッときた。やっぱりそうだよね、という個人的な気持ちと、これからのアンチエイジングはどんどん食にシフトしていくだろう、という職業的なヒントを得た気持ちである。

 アンチエイジング的な食に対する概念は、日本より韓国が先進国だと思う。食べて健康になる!と確固たる決意すら感じる食生活への真摯な態度は韓国に行くたびに私を驚かす。

 なにかこう「健康のためなら死んでもいい」ぐらい勢いがある。その延長線上に見た目を変えて若返る美容整形があるのだろう。そのポジティブな実践力には頭が下がる思いである。

 そして、昔、祖父や伯父たちが、オットセイやトラの何かを煎じて飲んだり、真っ黒な怪しい丸薬を高価そうな箱から取り出し、大まじめに口に含む姿を、その苦そうな香りとともに思い出す。おじさんたちも切実に、若く健康でいたかったんだなぁ。私はといえば、どんどん外見に構わなくなってきて、楽しく老いていければいいと思っている。


  ユン・ヤンジャ 1958年神奈川県生まれ。在日3世。和光大学経済学部卒。女性誌記者を経て、91年に広告・出版の企画会社「ZOO・PLANNING」設立。2006年6月「㈱生活文化出版」設立。