「なんか日本の国がずるずるとゆるーい速度で崩れていってるような気ぃがしますのんやけど、気のせェどっしゃろかぁ」。これは「正論」3月号の「主婦の眼、ママの声」と云う欄に載った「京都の主婦まいこ」さんの投書の書き出し部分です。これに対して私は京都弁ならぬハングルで「タック、タンシンマリ マジャヨ(まったく、おっしゃるとおりです)」と答えました。私がここん所ずーッと感じてきた、漠然とした不安感というか腹立たしさをピタリと言い表した言葉なのです。
世界の自動車業界に衝撃を与えたトヨタのリコール問題、デジタル家電分野、特に薄型テレビで完全に王国の座を韓国のサムスン、LGに明け渡し二番手になってしまった日本、それはそれで良いのですが、私らは子供の頃からごく最近まで「品質と技術は日本が一番」ということをあたり前のように実感して育ちましたし、世界のどの国もこれに異を唱えることはありませんでした。
次に海外での原発建設受注の問題。昨年12月にはUAEの原発受注でイゴット(これも)韓国に敗北しており、次のベトナムではロシアに先を越され、遅ればせながら第二期工事の受注を目指すとかで首脳外交を始めるという始末。もうまったくお話になりません。
そして極め付けがカナダ・バンクーバーの冬季オリンピック大会。韓国の大健闘、金メダル6個で世界第5位。日本は金メダル0で世界20位。それでも銀、銅のメダルをとれば「号外ーッ(ホウエー)」の熱狂ぶり。テレビのアナウンサーは8位以内に入れば「入賞おめでとうございますッ!」と絶叫をあげる。国全体から「優勝しよう! 金メダルをとろうッ!」という意気込みが全然感じられない祭典でした。最後にはヨナ・マオの対決で、私ははっきりと両国の「国の流れ」をヌッキョスムニダ(感じ取りました)。マオ選手の懸命の演技、むずかしい技への挑戦、決して悪くはなく、自己最高の得点を獲得したことは大いに賞賛されて良いものでした。しかし、ヨナ選手の安定し落着いた自信のある演技にはかないませんでした。眼に見えないフルム(流れ)には勝てなかったのです。
こんな文章を書いている私は何も日本国および日本人をおとしめようとする、いわゆる自虐史観の持ち主ではキョルコアニムニダ(決してありません)。こんな日本を何とか活気づけ、日本の人々が皆、国家というものを背負って立つよう元気になってほしい為に苦言を呈しているのであります。
最後に「京都の主婦まいこ」さんの言葉を借りて、今度は京都弁でひと言注意させてもらいまっさぁ。
「今の日本の政治家に希望を見い出せるような魅力のあるお人がいいひんゆうことがこの流れのもとでっせェ。早よ流れをかえてくれはるお人に出てきてほしおますなぁ」
1943年満州国生まれ。東京都立大学人文科学部卒。69年ヤクルト入社、71年韓国ヤクルト出向。94年から同社共同代表副社長代行。