今年の夏は本当に暑かった。16年前の94年にも同じような猛暑の夏でクッテ(その時)の最高気温が39度。その夏に購入したエアコンが今年はフル稼働で、こんなに使用したのも始めてでした。
この気候不順のせいか、9月2日午後4時に我が家の愛犬タジョヌが推定年齢15歳で大往生致しました。「タジョヌ」と云う名前のいわれは田口(タグチ)の家のジョヌ(我々の子どもの頃の雄犬の名は90%がこれでした。)ということでタジョヌ。いかにいい加減につけたかが良く分かる名前です。ただ、韓国では人間の場合でも大体「ア」と云う愛称をつけるので(私の推測ではア=児と云う字かなとも思いますが自信はありません)、この犬を呼ぶ場合は「タジョヌ+ア」のリエゾンで「タジョナー」となりますね。私の名前で云うと亮一、ハングル発音ヤンイル+アで「ヤンイラー」となります。皆さんも昔、漢南洞(ナンナムドン)あたりで「美淑:ミスク+アでミスガー、貞淑:チョンスク+アでチョンスガー」などと大声で叫び回ったことはありませんか? 無いッ? 無ければ先に進みます。
このタジョヌは腎臓を悪くしていたので、運動はあまり好きじゃなく、散歩の必要はない。大小便は必ずトイレに入ってする。あまり人に吠えないので本当に手のかからないカガジ(子犬)でした。
ただ食欲だけは主人に似て意地汚く旺盛で、私がちょっと甘いものでも食べているとキシンカッチ(お化けのように)音もなく寄って来て私の口元をジーッと見つめて、「御主人様、私メにもひと口・・・ねッ」という訳です。犬族は目でものを言うといいますからね。さて特技といえば韓国語が出来るということでしょうか。
日本語で言う「お手」は「アクス(握手)」、「おすわり」は「アンジャ」、「お回り」は「トラソッ」と言いますが一番面白いのは「オルゥム!(氷)」と言うと、その時の動作をピタッと止めそのまま静止して5秒位ジッとしているのです。これはかなりレベルの高い妙技といえまして、私共はこれをやらせては大笑いをしていました。彼は「もう、しょうがないナァー」という目をしていましたが・・・。
このように約10年もの長い間、私と家人の心をいやしてくれたタジョヌの死は、高齢による自然死でおだやかなものだったから救われたものの、我々夫婦にとってはかなりショックでした。ヨークシャテリアですから出身は英国で、育った環境は韓国で、主人は日本人と云う数奇な(?)運命をたどったタジョヌが、白も黒も黄色もない、北だ南だと争いのない静かな天国で、時々「オルゥム!」と云われて固まったりして楽しく過ごしてくれるようピリゴイッスムニダ(祈っています)。
家人は「別れが悲しいから、しばらくは生き物を飼うのはお父さんだけにしとこう」などとのたまって、私をくさらせています。
1943年満州国生まれ。東京都立大学人文科学部卒。69年ヤクルト入社、71年韓国ヤクルト出向。94年から同社共同代表副社長代行。