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2010/12/28

<随筆>◇軍隊というもの◇ アジアン美容クリニック 鄭 憲 院長

 韓国で、女性が嫌がる男たちの話題に、昔から「軍隊」と「サッカー」が挙げられてきました。

 2002年ワールドカップ以降は、国民全体の好感度も上昇した影響で、サッカーの話題は、女性にも関心は高まったかもしれませんが、軍隊に関しては、やはり女子禁制の領域であるようです。

 韓国では、18歳以上の全ての健康な男子に2年間の兵役義務が課されています。

 当然のように、軍隊生活は想像以上に過酷で、徹底的に軍人としての精神、肉体、そして規律や考え方をたたきこまれます。

 80%以上が大学に進学する韓国では、大学に入学した後、一時休学して兵役に就くものが多いようですが、一般社会から隔離され長い軍隊生活をすることは、大きな負担と言えます。特にスポーツ選手や芸能・芸術関係の若者にとっては、最も貴重な時期ともいえるため、あらゆる手段を使って兵役逃れをするものもいて、日本でも時々報道されています。それだけに兵役免除という褒賞がついた大会での韓国選手の頑張りには、やはりそれだけの意味があるからです。

 過酷な訓練の中、兵役中の事故で死亡する者もおり、また上官、先輩兵からのしごきや苛めにより、懲罰覚悟で脱走する兵士や、中には暴発して死傷事件を起こす兵士も伝えられます。

 しかし今もなお休戦状態にある韓国と北朝鮮の状況からして、兵役や徴兵制自体に疑問を持つ国民は少ないでしょう。

 ある韓国人の男性に言わせると、軍隊とは、「男として、国民として、一度は行って来るべきものだが、二度はご免だ」という表現でした。しかし、今回の延坪島砲撃後、最も危険とされる海兵隊への志願者がむしろ急増したという事実は、国を守る意識の高さを示すものでしょう。

 一方、躍進する韓国企業の強さを分析するアナリストの一人は、日本人より個人主義であるはずの韓国人が、集団として一致団結して行動力を示す秘密が軍隊経験にあると考えているようです。

 日本では酒席などで、たまに年配の人たちが、「最近の若者は軟弱で、軍隊でも行ってきたほうが良い。」などと愚痴っているのを聞くことがありますが、そのご当人も、軍隊のぐの字も知らない世代のようですが…。


  チョン・ホン 1963年、東京・新宿生まれ。韓国・延世大学医学部卒。韓国医師免許、日本医師免許取得。東京大学医学部付属病院助手、両国同愛記念病院形成外科医長、湯河原厚生年金病院形成外科医長等をへて上野にアジアン美容クリニックを開業。帝京大学病院美容センター講師。アンチエイジング手術を得意とする。