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2012/03/23

<随筆>◇ウエブレン効果?◇ マッカン・ジャパン 大西 憲一 代表

 2か月ぶりのソウルでタイミングよく「信濃を愛する会」に参加できた。この会は信濃(長野県)にゆかりのある人は勿論、単に「信濃を愛する人」も参加できるという門戸の広い会です。

 私は大昔、善光寺参りをしたことがあるだけで、特に信濃にゆかりも愛してもいなかったが、数年前に参加者の一人に勧められて以来のお付き合いである。いわゆる異業種の日本人、韓国人が入り乱れて大いに飲み、語り、歌うという、ちょっと異色のモイム(集まり)です。

席を隣りにした韓国人のSさんは日本の清酒を輸入販売して成功している。ここ数年の間に日本酒の輸入は爆発的に増えているが、彼はうまくニーズを先取りしている。

ただ、ブランド競争は熾烈を極めており、一瞬の油断もできないとこぼしていた。

 ところで、決して安くない日本酒が韓国でこんなに売れているのは何故だろうか?円高の上に15%の関税と酒税などを合わせると税金は約70%。庶民にはちょっと手が出そうにないと思うが、高級ブランドが若い韓国のお客にも人気がある。

 Sさんの説明によれば、最近、韓国人の酒文化が変わってきているのも一因だと。つまり、従来の浴びるほど飲む「爆弾酒文化」から、良い雰囲気の中で「高級な酒を楽しむ文化」が芽生えつつあるらしい。日本式居酒屋の普及も拍車をかけている。

今や、彼女とお洒落なデートを決めるには日本酒が最適だそうな。

それに韓国人の高級志向も大いにプラスしていると私は見ている。高い輸入車が増えているのと同じ理由だ。

 酒税は日本も高いが、Sさんは関税を気にしている。日本はビールの関税はゼロ。「早く日韓FTAを成立させてほしい」Sさんが真剣に訴えていた。うーん、Sさんの気持ちはよく分かるが、では日本酒がどんどん安くなれば消費が一気に増えるのか…若干の疑問が残る。

「ウエブレン効果」という言葉がある。価格が高ければ高いほど希少価値が増えて客も増える、という現象です。もっとも日本酒が「ウエブレン効果」の対象になるのか…ちょっと難しいところですね。

 某週刊誌で「長野県は死亡率が圧倒的に低い」という特集をやっていた。2010年の都道府県別低死亡率で、長野県が男女ともにトップにランクされたのだ。

理由はいろいろあるが、たんぱく源としてのイナゴや蜂の子、蚕のさなぎなどが長寿に一役買っているらしい。蚕のさなぎといえば、韓国名物「ポンデギ」のことだ。

 なるほど、「信濃を愛する会」のメンバーは全員、元気がいいわけだ。すっかり出来上がったSさんの大声が鳴り響いた。「爆弾酒、始めるよ!」


  おおにし・けんいち 福井県生まれ。83―87年日商岩井釜山出張所長、94年韓国日商岩井代表理事、2000年7月新・韓国日商岩井理事。09年10月より韓国TASETO専務理事。2011年9月よりマッカン・ジャパン代表。