中国杭州の浙江工商大学で韓国学研究所創立記念に「東アジアの中の韓国」という国際学会が行われ、参加した。韓国から多くの学者が参加したが日本からの参加者は私一人だけであった。
私はすでに中国を十数回訪問したことになるが、あまりにも大きい国であり、中国を知っているとは言えない。また中国は理解し難い国ともいわれるのはなぜであろうか。それは国が大きいからだけではない。
杭州は韓国の愛国運動者が多かった歴史を持っており、反日的な地域である。他方では日本と企業の協力が盛んな地域でもあり、日本への感情は非常にアンビバレンスであるという。
今は日中関係が最悪の中、多少脅威感さえ感じた。杭州の大型娯楽ショーの日本語の字幕をなくすなど、気まずい雰囲気であった。観光案内板の日本語が消されたことや、南京や瀋陽の918記念館などの展示も変えようとするという動きがあることなどの政策が聞かされた。
日本人出入り禁止という張り紙がある食堂で韓国人と韓国語で話をしていた時ある従業員が話している言葉を日本語と間違い、断られたという。大学の日本人教師は外出を控えるようにしており、買い物などは代わりにしてあげるなどの話があり、そんな中で私が日本から来たという話を聞いて意外な表情をした人もいたという話も聞いた。
日系産業で仕事をしている人は生産量が以前の半分から3分の1位に激減している。特に日本製の車を乗るのは危険であるという実感を語る人もいる。日本人でも「韓国人だ」というのが身の安全だと言うほど、思った以上に深刻である。私は韓国人たちに韓国語で防衛されて安全であった。
観光地では日本人に会うことはなく、至るとこに韓国人団体観光客の逞しい行列に出会ったような感じである。
会議は副総長の戴文戦氏の開会宣言の挨拶から始まって、北京・中国国際問題研究所の研究員(教授)の姜躍春氏は「東アジア共同体へ新運動と日中韓の合作」という題で、経済成長から見て日本は衰退し、中国と韓国は成長すること、目下、領土問題で膠着して東アジア共同体の推進は困難な状況であると発表した。
他方延辺大学の方浩範氏は学生へのアンケート調査では「日本が好き」という結果になっていると発表した。
私は経済成長のみで社会の発展を測ることを問題とし、先進国とは人権や社会福祉など生活の質を高めるべきだと述べ、「日本はまだまだ十分先進国であり、中国や韓国は日本をモデルにすべきだ」と主張した。私の意見に対し、北京民族大学の黄有福教授は「ドイツのように日本が本気で戦争の加害者として反省と謝罪をしない限り東アジア共同体は無理である」と語った。
私は韓日中の3カ国は植民と被植民などの植民地意識から完全に離脱し、自由にならなくては創造的な自由の民にはなれないと話した。
チェ・ギルソン 1940年韓国・京畿道楊州生まれ。ソウル大学校卒、筑波大学文学博士(社会人類学)。陸軍士官学校教官、広島大学教授を経て現在は東亜大学・東アジア文化研究所所長、広島大学名誉教授。